富裕層はリッツ・カールトンで資産運用する – 日本経済新聞

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 日本の「超富裕層」たちは何に関心があり、どんな金融サービスを利用しているのか…。かつて野村証券で金融資産10億円を超える大手顧客を対象としたプライベートバンク部門で辣腕をふるったZUU社長兼CEO(最高経営責任者)の冨田和成氏が、超富裕層の実態を解説します。

 アベノミクス効果で資産運用に積極的な個人は増加しています。資産運用と言うと多くの方は、株式や債券、投資信託、保険や不動産などを想像されるでしょう。しかし、富裕層の間には少し違った世界が広がっています。

 富裕層向けには不定期に、特別な金融商品の募集が行われることがあります。その商品を買うためには「最低投資金額1億円」「個人資産10億円以上の方のみ」「法人で総資産10億円以上のみ」など、何らかの最低条件が課せられています。ちなみに、この“法人”には、前回紹介した富裕層の資産管理会社も含まれるため、実質的には“個人”向けに販売されることも多いといえます。

 では、そんな富裕層専用の金融商品とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

(1)私募ファンド

 圧倒的に多いのは私募ファンドでしょう。不特定多数に販売される“公募”ファンドに対して、“私募”とは50人未満の投資家を対象とすることを意味します。

 私募ファンドは例えば、米国上場のテクノロジー株への投資に特化したものや、アジア株の中でも時価総額の小さい「スモールキャップ」に投資をするもの、それから最近も東京都がスパークス・グループと組んで設定したような、太陽光や風力などのクリーン発電事業に投資をするものなど、投資先は公募ファンドと比べても非常に多岐にわたります。

 普段は機関投資家(年金や大学基金など)向けに特化しているヘッジファンドが、私募ファンドとしてお金を募ることもありますし、未上場株に投資するベンチャーキャピタルの新ファンドへの投資が証券会社を通して募集されることもあります。

(2)ワインや絵画などの実物

 ワイン、絵画、切手、コインなどは単なる趣味の品ではなく、欧米では古くから投資対象と位置付けられています。英国不動産大手ナイト・フランクが毎年発表する実物資産価格の合成指数「KFLII」の推移は、過去10年間でこのような実物資産が総合的に見て179%値上がりしたことを示しています。

 はこの合成指数とその内訳ですが、ビンテージカーは10年で5倍以上に値上がりしています。表にある以外にも、プライベートジェットやプライベートクルーザーなどに対する実用を兼ねた投資も、富裕層には盛んに提案されています。

[左]出所:ナイト・フランク レポートから、実物資産全体の値動きを表す「THE KNIGHT FRANK’s LUXURY INVESTMENT INDEX (KFLII)」 注:▲はマイナス
[右]価格が高騰したビンテージカーの中でも人気の高いフェラーリ308シリーズ

(3)海外不動産

さながらマンション投資のように、「ザ・リッツ・カールトン」のようなホテルを部屋単位で購入し、宿泊料というインカム収入を得られる投資も

 近年、富裕層への提案が盛り上がっているのが海外不動産です。一般向けにはマレーシアやフィリピンなど東南アジアも有名ですが、富裕層向けで目立つのは米国不動産。

 例えば2013年の前半には、新しくハワイに開業した「ザ・リッツ・カールトン」への投資が日本の富裕層に向けて提案されていました。これはホテルを一室単位で買い、自分自身がハワイへ行く際は宿として利用でき、その他の期間は貸し出すことができる不動産オーナープログラムです。

 米国の中古木造建築への投資も注目されています。これは実は節税対策のため。米国での不動産であえて損を出し、損失と他の所得を相殺するというスキームです。

 カラクリはこうです。日本では価格のうち土地と建物の割合が7:3程度であるのに対して、米国では2:8程度です。また米国の木造賃貸住宅の場合、最短4年で減価償却できてしまいます。建物の割合が高いにもかかわらず減価償却スピードが速いので、タイミングが合う物件を見つければ大きな節税効果があるわけです。

■オルタナティブ投資の効用

 様々な富裕層投資の世界を紹介してきましたが、このような投資対象はオルタナティブ(代替)投資と呼ばれています。伝統的な資産運用において推奨される資産配分は、株式50%・債券50%でしたが、両者の価格が同方向に動くことが多い現在の金融市場では通用しなくなってきています。そのため、オルタナティブをポートフォリオに入れて運用する考え方が浸透してきています。その筆頭は米エール大学やハーバード大学です。

 特にエール大学の基金運用局は、1985~2005年の20年間の平均で年率16.1%という驚異的な運用成績を達成しましたが、前述の私募ファンドや実物投資、不動産投資などのオルタナティブ投資も取り入れた結果でした。

 このように特別な金融商品以外にも、富裕層ならではのメリットはあります。例えば投資金額が大きくなると手数料優遇を受けることが可能な商品も少なくありません。外貨建て資産の為替手数料は、1000万円や1億円を超えると急激に安くなる会社が多いです。投資信託も1億円以上で買うと、手数料が半分以下になる商品が多く、加えて運用額が大きい顧客には、値上がり期待の高いIPO(新規公開株)などの配分もされやすくなります。

 これだけ聞くと、「富裕層はさらに富裕層になっていくのか……」と思われるかもしれませんが、良いことばかりではありません。富裕層には色々な人たちが近づいてきて、その中には投資詐欺のような提案もあります。そのため、新しい金融商品に関しては複数の専門家に相談するなど、彼らならではの自己防衛が必要になるのです。

冨田和成(とみた・かずまさ) ZUU社長兼CEO。一橋大学在学中にソーシャル・マーケティングで起業。卒業後、野村証券で同年代のトップセールスなどを記録し、最年少でプライベートバンク部門に異動し活躍。退職後にZUUを設立し、金融ポータルメディアZUU onlineなどを運営。

[日経マネー2015年1月号の記事を基に再構成]

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