なぜ、日本の製造業はソリューションビジネスで成功しないのか? – 日刊工業新聞

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内容

ものづくり企業からソリューション提供企業へ変貌が迫られる製造業において、製品開発の効率化・開発スピードの向上・タイムリーな製品の市場投入は必須。これらを実現に導くDCM(デザインチェーンマネジメント)と呼ばれる設計開発領域の改革の進め方とツールを指南する。

はじめに 

第1章 なぜ、日本の製造業は「ソリューションビジネス」で成功しないのか?

第1節 製造業を取り巻く事業背景とソリューションビジネスの実情 

 第1項 製造業の事業背景と名ばかり変革の問題

 第2項 製造業のソリューションビジネスとは何か?

 第3項 横河電機におけるソリューションビジネスに向けた取り組み

 第4項 サプライ・チェーン・マネジメントとデザイン・チェーン・マネジメント(SCMとDCM)

 第5項 ソリューションビジネス成功に向けた3つの視点(WHAT)

第2節 小手先改革に終わらせないための「5つの変革ポイント」

 第1項 改革活動から生まれた5つの変革ポイント

  変革ポイント1「フロントエンドイノベーション」

  変革ポイント2「フレキシブルオーガナイゼーション」

  変革ポイント3「ビジネスリーダー育成」

  変革ポイント4「レイヤー戦略/マージナル戦略」

  変革ポイント5「ビジネス拡大の手段としてのグローバル技術基盤」

 第2項 改革成功のCSF

第2章 ものづくりモデル変革手法

第1節 ものづくりモデル変革の必要性

  日本製造業に必要な「破壊的イノベーション(Disruption)」

  ものづくりの本質的価値を「設計情報の流れ」で捉える

  価値のパラダイムシフト

  開発領域改革からものづくりモデル変革へ

第2節 ものづくりモデル変革を支える3つのA

 第1項 ものづくりモデル変革を支える3つのAの全体像

 第2項 Asset(アセット) 〜無形資産による価値生産性を高める

  Asset(アセット)におけるパラダイムシフト〜「知識、ノウハウ、能力」重視の経営マネジメントにシフトせよ

 第3項 Architecture(アーキテクチャ)〜エコシステム全体で価値生産性を高める

  Architecture(アーキテクチャ)におけるパラダイムシフト(その1)〜製品売りビジネスに合わせて最適化されたアーキテクチャからの脱却

  Architecture(アーキテクチャ)におけるパラダイムシフト(その2)〜製品売りビジネスに最適化させた組織構造を変える

 第4項 Accelerator(アクセラレータ)〜ビジネスモデル進化を加速する

  Accelerator(アクセラレータ)におけるパラダイムシフト 〜企業起点改革から顧客起点の改革に

第3節 ものづくりモデル変革=Disruptionを実行するための方法

 第1項 ものづくりモデル変革=Disruption実践の全体像

 第2項 “有形資産”偏重から“無形資産”重視に変える(デザインモデル構築のステップ)

  デザインモデル(Design Model)を構築する 〜ステップ全体像

  デザインモデルの全体を考える 〜①アーキテクチャ調査

  デザインモデルを解く 〜②デザインモデル可視化・構造化

  デザインモデルを次世代に残す 〜③ビジネスルールデータ体系化

  デザインモデルを再利用する 〜④コントロールする情報管理基盤の構築

 第3項 “製品起点”の改革から“顧客起点”の改革に変える(コンフィギュレータ構築のステップ)

  コンフィギュレータを構築する 〜ステップ全体像

  なぜ売れているかを考える 〜①コンフィグルールデザイン

  どうやって売れているかを考える 〜②コンフィグプロセスデザイン

  顧客の課題を継続的に解決する 〜③コンフィグデータデザイン

 第4項 “製品ビジネス最適組織”から“動的モジュール型組織”に変える(組織・人財改革の構築ステップ)

  人財育成の組織を創る 〜ステップ全体像

  ビジネス戦略との整合をとる 〜①企業戦略・ビジネス戦略の整理

  顧客優先のアサインをする 〜②動的モジュール型組織デザイン

  感度の良いセンサーの持ち主を育てる〜③グローバル/イノベーティブ人財育成

  仕組みで人財を育てる 〜③継続的組織・人財コントロール基盤構築

 第5項 “プロダクトアウト型発想”から“コア技術活用イノベーション型発想”に変える(問題解決型アーキテクチャの構築ステップ)

  問題解決型アーキテクチャを構築する 〜ステップ全体像

  自社の製品を考える 〜①コア技術抽出

  プロダクトアウトから脱却する 〜②コア技術整理と活用(アーキテクチャ分析)

  次世代に技術をつなぐ 〜③イノベーション型情報基盤構築

コラム 「新しい製品やビジネスづくりについて」(前編)
青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター 客員研究員 阿部 武志

第3章 変革への道1:グローバル市場のフロント(営業)を変えろ〜クライアントのニーズに迅速に対応する

第1節 変革の道への第1歩(前提と背景)

  特注が標準

  あなたの言うことは、この本に書いてある

第2節 変革の道への第2歩(実施ステップとポイント)

  コンフィギュレータって何?

  君たちは何をしたいのか?

  誰も知らないルールの根拠

  こういうモノが欲しかった

第3節 変革の道への第3歩(成果)

第4節 変革の道の続き(今後に向けて)

第4章 変革への道2:製品開発の壁を壊せ〜全社のノウハウを活かし価値づくりを最大化させる

第1節 変革の道への第1歩(前提と背景)

  作れば買ってもらえる

  開発の機会がない?!

第2節 変革の道への第2歩(実施ステップとポイント)

  誰のための開発か?

  私はこうして作られた(偶然の産物)

  設計・開発にサイエンスを取り入れる

  すべては顧客のために

第3節 変革の道への第3(成果)

第4節 変革の道の続き(今後に向けて)

第5章 変革への道3:ソリューションという名の新しい価値を創れ ~コアの強みを市場につなげてさらなる価値を創出する

第1節 変革の道への第1歩(前提と背景)

  やめられるわけがないでしょ?

  絵に描いた餅

第2節 変革の道への第2歩(実施ステップとポイント)

  敵はすぐそこまでやってきている(技術優位性はなくなった)

  イノベーションの扉はすでに開いている

  大切なことはワクワク感

  あとはやる気、すべては次世代のために

第3節 変革の道への第3歩(成果)

第4節 変革の道の続き(今後に向けて)

第5節 変革の道に添えて

〈特別執筆〉

グローバル統合型ものづくりITシステムの提案
埼玉大学人文社会科学研究科 教授

      東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター 特任准教授 朴 英元

コラム 「新しい製品やビジネスづくりについて」(後編)
青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター 客員研究員 阿部 武志

おわりに

参考文献

索  引

 私が株式会社ワイ・ディ・シー(YDC)の社長を務めていた時代に、「製造業に対してビジネス変革をコンサルする集団」を立ち上げた。本書は、その集団名でもあり、ビジネス変革を推進するコンセプトでもある「共動創発」の内容とその手法について、メンバーの体験に基づき執筆した実践的な書籍である。

 共動創発の設立に至った経緯と、横河電機株式会社(以下横河)の中で大変順調に「共動創発活動」ができていることについて、以下に簡単に述べる。

 2011年から2015年まで私はYDCの社長をしており、それより以前は横河でインダストリアル・オートメーション(IA)の開発を中心とした事業の担当役員として、責任者の立場にいた。横河は、IA事業の開発・製造・販売・サービスのビジネスをグローバルに展開している。手前味噌だが、横河の技術と製品の信頼性は、この業界ではトップレベルと言っても過言ではない。

 世界がますますフラット化してくる中、顧客要求に対していかに早く提案できるかが、顧客にとっても横河自身にとってもビジネス上大変重要となっている。そのような意味においても、製品開発の効率化・開発スピードの向上・製品のタイムリーな市場投入が重要である。さらには、なぜその製品が顧客にとって必要か、また製品が開発されるタイミングやその商流を考えた上での設計、さらにはライフサイクルに至るサービスがどうあるべきかなどの観点を含めて、戦略を立てなければならないことは言うまでもない。

 当時、横河の社長からもこのような課題が示され、我々自身もその多くを認識していたものの、適切な解決手法を見出すことができなかった。このもやもやした気持ちの中、5年前にYDCの社長就任のミッションが下りてきた。これを機に、YDCの改革に専念し、中期経営計画を当時の役員とともに作成し、実行に移すことになったわけである。

 そして、ちょうど4年ほど前、ある人の紹介により共動創発の中心メンバー(本書の著者)と順次会うことになる。彼らと話をしてみると、私は大変驚かされた。それは、彼らが開発の効率化、開発スピードの向上、ビジネスのスムースな展開における手法をすでに実践しており、我々が求めていた課題への回答が目前にあると強く感じたからである。面談したその場で、「即、YDCに来てほしい」とお願いした。「まずは横河で実践してほしい」という私の希望は、彼らの思いと全く同じであったことから、改革に向けた活動は一気に加速することになる。

 彼らのYDCへの入社を待って、当時の横河の社長に説明し、その場でこの活動に対して理解をしてもらった。そして、さっそく技術部長を十数人集めて説明会を開いた。忘れもしないが、開発業務の改革手法を説明し、横河の中で何ができるかの話をした後に、ある部長がこのように口を開いた。

 「それは今、私が読んでいる本の受け売りではないか。そんなことなら、この本の方がもっと詳しく書いてあるよ……」

 その部長が手にしていたのは、共動創発のメンバーが以前に出版した本だった。まさに、「事実は小説よりも奇なり」を地で行くエピソードであった。

 そこから横河の中で、共動創発が提唱する開発手法の改革を柱としたビジネス変革活動が本格始動する。トップダウンによるスタートではあったが、プライドの高い技術者に対するコンサルはひと筋縄にはいかなかった。そこで私は共動創発のメンバーに相談し、向こう3年間は横河の中での活動に集中することを決めた。横河でまず成果を出し、それを持って横河以外の会社にも展開する方針としたのである。2015年3月末で活動開始3年のひと区切りを迎え、一定の成果も収めることができた。そして、翌4月からは横河の中での活動を継続しつつ、横河以外にも活動を展開している。おかげさまで、横河の中での共動創発活動の評価の高まりとともに、メンバーは多忙を極めているとのことだ。

 横河の中でのコンサル業務は、当時の社長と現社長、担当事業本部長のほか横河社内の多くの方々の理解と協力を得て、総じてうまく回っているようである。担当事業本部長は海外の拠点長を経験してきたことも相まって、グローバルな視点で深い問題意識を持っており、横河の改善すべき課題の共有に向けて共動創発と深い連携をしてきている。共動創発の事業のスタートからの4年を振り返り、企業の中での改革、特にDCM(Design Chain Management:デザイン・チェーン・マネジメント)の改革を実行し、成果を出すために何が必要不可欠であるかについて、経営的な観点で私の感じたことを述べる。

 ①スタート時点で重要なこと

 トップに理解してもらい、強力に後押しをもらうこと。改革は痛みと多くの工数を伴うものであり、成果が見えて社内に定着するまでは、トップの理解と後押しがなければ改革はうまく回らない。

 ②全体最適と部分最適

 DCMの改革は全社組織にまたがるため、全体最適の改革方針により事業部単位では部分最適とならない場合があり、担当役員のバックアップが求められる。

 ③実行にあたり 

 新製品の設計業務においては、クリエイティブな部分が新製品の差別化要素となるため、重要であることは言うまでもない。ただし、過去の設計資産やノウハウを上手に再利用することで効率は上がる。その意味での効率化設計には開発担当者、特にベテランと言われる技術者の協力を得て、彼らのノウハウを吐き出してもらい、多くの人が共有することでノウハウ・技術の再利用が可能となる。こうしたことで、クリエイティブな開発をする時間がより多く得られる。

 ④リーダーの役割

 社内の他事業部のメンバーが、改革の障害となることがある。改革においては、全体最適と部分最適のぶつかり合いとなり、得てしてその企業で育ったメンバーが改革のリーダーを担う際に、社内メンバーを説得しきれないことがある。社外事例を多数知っている外部コンサルだからこそ、トップの理解を得て乗り越えられるのである。

 最近の世界の製造業においては、IoT、ICT、AIを積極的に取り込み、生産に生かすことで、生産効率や品質の向上、生産コストと保守ランニングコストの低減を進めている。このことは、ものづくりの上流側である製品設計に大きく影響しており、複雑化してきているが、この解についても本書には多くのヒントを記載している。複雑系の対応に関しては、我々がコラボレーションしている東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センターの朴先生、青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センターの阿部先生などの執筆協力をいただき、内容の濃いものになっている。

 中国をはじめ開発途上国が労働力の安さの差別化のみならず、彼ら自身が技術レベルを上げてきている中、欧米の製造業も交えて熾烈な差別化競争が今後も続くと予想される。本書を通じて提唱する我々の活動が、日本のものづくりを強くすることにつながると自負している。

2016年9月

株式会社ワイ・ディ・シー 取締役・相談役(前 代表取締役社長)

元横河電機株式会社 取締役・専務執行役員

三奈木 輝良






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