ココイチ事件で重大な問題浮上…食の安全を揺るがす違法業者が跋扈 – ニフティニュース

Home » 10環境 » リサイクル関連法 » ココイチ事件で重大な問題浮上…食の安全を揺るがす違法業者が跋扈 – ニフティニュース
リサイクル関連法 コメントはまだありません



 カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)の廃棄カツ横流し事件発覚から、ほぼ1年が経過した。この間、2016年10月末には、事件で詐欺罪などに問われた3人の初公判が開かれ、3人とも起訴内容を認めた。

 それに先立って同年7月以降、環境省と農林水産省はそれぞれ関連審議会【編注1】の合同会合などを開催。食品廃棄物等【編注2】の不適正な転売防止対策を強化するために、関連の食品リサイクル法の「判断基準省令」【編注3】改正と、その省令に基づく食品関連事業者(食品の製造・加工、卸・小売、飲食店など)の取組指針であるガイドライン【編注4】策定について、両大臣の諮問に対する答申をまとめるなどのために審議を進めてきた。

 つまり、事件の終結に向けて、行政の対応も大詰めの段階を迎えているというわけだが、実はその一連の審議の中で突然、重大な問題が浮上してきた。

●法規制対象外のブローカーが介在か

 その重大な問題とは、何か。関連の審議会の動きを知るために、たまたま環境省中央環境審議会循環型社会部会(第15回、16年9月14日)の議事録を見ていて、次のような同部会事務局担当者(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル部企画課リサイクル推進室の田中良典室長)の説明が気になった。

「廃掃法(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の略称。廃棄物処理法は通称)のもとでの地方公共団体の許認可の及ばない第三者、いわゆるブローカーが排出事業者と処理業者との間の契約に介在して、あっせん・仲介・代理等を行っているケースが議論となりました」

 この聞き慣れないブローカーとは一体、何か。その議論は、いつなされたのか。それは、16年7月6日の環境省中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会と、農水省食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会との、第14回合同会合でのことのようだ。

 その議事録によれば、境環省の食品リサイクル専門委員会委員のひとり、全国清掃事業連合会の山田久専務理事(以下、山田委員と記載)が次のように語った。

「今、大変な問題が起きつつある」と前置きした上で、「今回の食品廃棄物の(略)、不適正処理【筆者注:ココイチ事件】をもたらした重要な要因に目を向けるべきです。1つは、廃棄物処理法に基づく処理責任の重さについて、行政や排出企業の皆さんの自覚が希薄になっている」

 もうひとつは、廃棄物を適正に処理するためには、適正な費用がかかるということを軽視する風潮があるという。つまり、食品廃棄物を排出する企業の責任と、食品廃棄物を処理する際の料金・コストをめぐって、大きな問題が起きているというのだ。

「食品リサイクルには、通常の焼却や埋め立てよりも人手も時間もかかる(略)リサイクルにはキロ30円も40円もかかるんだという話があります」(山田委員)

 ところが、今回のココイチ事件では、「キロ10円以下」だという。

「キロ10円以下ではちゃんとしたリサイクルが難しい、(略)排出事業者は何を考えているのか知らないけれども、そういう安い処理業者に平気で出しているんです」(同)

●おまえら、なんぼにするんだ

 実は、今回の事件は、いろいろなことを象徴している事件だ。たとえば、産業廃棄物処理業者・ダイコーの廃棄物保管倉庫は愛知県4カ所と岐阜県1カ所の計5カ所に分散し、そのなかに飲料水や調味料、菓子類、乾燥野菜、小麦粉、冷凍食品などが保管されていた。そのうち排出事業者が特定できたのは全体の6割程度で、それは107社分の重量にして1000トン以上になる【編注5】。

「様々な食品メーカーのラベルがいっぱいあったという事態なんですね」(同)

 なぜ、そうなったのか。それは、排出事業者と処理業者の間に介在し、“廃棄物処理や廃棄物取引の仲立ち、管理コストの削減をうたう”事業者が増え、排出者と処理業者の直接の関係性が非常に希薄になったことが原因ではないか、と山田委員は見ている。

「ブローカーがいるわけですよ」(同)

 ブローカーは廃棄物管理業者と称して、廃棄物数量の集計から処理費用の支払い、リサイクルの推進、行政対応など排出事業者の責任にかかわる業務のほぼすべてを代行する。これを廃棄物の一元管理と呼ぶという。特に大手スーパーなどの廃棄物処理担当者は、多忙な上に会社からコストダウンを迫られているだけに、ブローカーの「安くします」「交渉します」という誘いに乗りやすい。

 その結果、廃棄物の収集運搬業者と処分業者に対する、収集運搬・処理料金の値切り(料金の引き下げ)が助長されがちだという。

 事業活動に伴って生じる事業系ごみ、具体的には産業廃棄物(汚泥や廃油、金属くずなど20種)と、産業廃棄物以外の一般廃棄物の場合、こんな話もあるようだ。ひとつの市で、その収集運搬に介入したブローカーが許可業者を集め、処理料金をいくらにするか、と迫る。

「おまえら、何ぼにするんだと。排出企業から俺は全権を依頼されているから、もう俺の自由だと」(同)

 そこで、たとえばキロ15円の処理料金を10円にし、そのうち半分をブローカーの取り分にしてしまう。

「こういう実態が今、全国で広がっている。リーマンショック以降、それがもう本当にひどい状態になっているということをわかっていただきたい」(同)

●大変生々しくて、非常に重要な説明

 この一連の山田委員の説明について、合同会合の石川雅紀座長(神戸大学大学院経済学研究科教授、環境省の食品リサイクル専門委員会座長)は、「大変生々しくて、非常に重要なご説明をいただきました」と語った。

 また、環境省の食品リサイクル専門委員会と同様に、循環型社会部の委員会のひとつである廃棄物処理制度専門委員会(第4回、16年8月2日)でも、山田委員と同じ全国清掃事業連合会の説明員が、ブローカーの件について、類似の説明をした。

 その際、同専門委員会の田崎智宏委員(国立環境研究所資源環境・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室長)が「ただいまご説明のあった責任の形骸化、私も非常に心配しているところです」と語った。

「ブローカーのあっせんというところで、家電リサイクル法と廃掃法のすき間でちょっと問題が起きているので、あわせて説明させていただきます」(田崎委員)

 家電リサイクル法では、小売事業者が消費者から使用済み家電を受け取り、メーカーに引き渡すことになっている。ところが、小売事業者が消費者に対して廃棄物処理業者を斡旋し、自分の責任を免れている事例があるという。

「あっせんするときに、コストが安いからと、適正処理という話は抜きにしてコストだけというような話は、これは到底許されない行為だと思っております」(同)

●旧厚生省が適切な対応を求めたが

 実は、ブローカーの介在が問題になったのは、今回が初めてではない。1999年8月30日に発表された、当時の厚生省による都道府県の一般廃棄物処理行政担当部(局)長あての通知「一般廃棄物の適正な処理の確保について」には、次のような旨が書かれている。

 まず、前置きとして、廃掃法の決まりが書いてある。一般廃棄物の処理(収集運搬と処分)は市町村の固有事務(市町村が自治体としての目的を達成するために行う仕事)だ。ただ市町村長の許可を受けた処理業者が一般廃棄物の処理を行う場合でも、「市町村の処理責任の原則」の下、処理業者は市町村の監督を受けて適正に処理しなければならない。

 ところが、廃掃法の下で、市町村の規制権限が及ばない第三者が、一般廃棄物の排出事業者と処理業者の間の契約に介在し、第七条で禁止される一般廃棄物処理の委託行為に当たる(処理業者は一般廃棄物の処分を他人に委託してはならない)と認められる場合がある。

 そのことなどから、「一般廃棄物の適切な処理の観点から必要があると認められる場合、排出事業者と処理業者などに対し指導などを行うことによって『適切に対応』し、一般廃棄物の適正な処理の確保に遺憾のなきを期されたい」これについて、先の全国清掃事業連合会の説明員は、こう語った。

「しかし、適切に対応するだけを求めるだけでしたものですから、どういうことになったかというと、(略)最近では、(略)ブローカーが、(略)代理等という立場を超え、排出事業者と廃棄物処理業者との間に介在して主導権を持ち、(略)主体性が低下するような事態が生じていると聞いております」

●食品リサイクルの根幹を揺るがす“新たな闇の世界”を注視

 実はこのブローカーの件について、その後、議論したとみられる環境、農水両省の審議会の食品リサイクル関連委員会合同会合(第15回、16年9月8日)と、環境省中央環境審議会廃棄物制度専門委員会(第15回、16年9月1日)の議事録は、現時点(16年12月7日)ではまだ公開されていない。

 この「ブローカー問題」は、食品廃棄物処理と一体化して進められる食品リサイクルシステムの根幹を揺るがせにしかねず、その意味でこれはまさに“新たな闇の世界”であり、その今後の動きを注視したい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】環境省中央環境審議会食品リサイクル専門委員会、農水省食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会

【編注2】食品廃棄物等=食用後、または食用に供されずに廃棄されたもの。食品の製造・加工、調理の過程で副次的に得られたもののうち、食用に供することができないもの

【編注3】(1)食品リサイクル法の「判断基準省令」=食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項を定める省令(2001年5月30日財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第4号)
(2)「同『判断基準省令』の改定について」<答申><案>(16年9月)環境省中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会と、農水省食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会との第15回合同会合の資料1。2016年9月8日

【編注4】ガイドライン=「食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の不適正な転売の防止の取組強化のための食品関連事業者向けガイドライン」(案)農林水産省食料産業局バイオマス循環資源化課食品産業環境対策室、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル部企画課リサイクル推進室。環境省中央環境審議会循環型社会部会(第15回、16年9月14日)の参考資料1−2

【編注5】(1)環境省中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第3回、16年6月30日)資料3「ダイコー(株)による廃棄物の不適正保管について」(愛知県発表資料/筆者推定)
(2)「ダイコー(株)海津倉庫の廃棄食品等の全量撤去について」(岐阜県発表資料、16年8月31日)






コメントを残す