「ヤクルトレディ」に日本のシェアリングエコノミーの原型を見た – ニュースイッチ Newswitch

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 最近、シェアリングエコノミーという言葉をよく聞く。普通、シェアとは市場占有率のことで、一定のパイを奪い合うイメージがつきまとう。だが最近のサービス業では、むしろ分かち合うイメージが強い。

 一般的に、ある人があるモノを所有すると他人は同時に所有できない(占有原則)。もちろん法的に共同所有は可能だが、それでも共有物を同時に使用することは難しい。

 他方、情報の世界では、何人でも同じ情報を共有しうる。大学の講義は、ある種の“知のシェア化”である。「お伝えします」という、一方から他方へモノを渡すイメージの言い方に替わって、最近は「情報をシェアしましょう」という言い方が増えているのも、いかにも情報社会的だ。

 さて、シェアリングエコノミーでいうシェアとは、実は“所有”ではなく“使用”の話である。あるモノやサービスを独占所有しようとすれば資源は足りず奪い合いになるが、使用時間を工夫して使い回せば多くで分かちあえるだろう。

 シェアリングエコノミーの代表例とされるのが、配車ビジネスの「Uber」(ウーバー)や民間住宅を宿泊施設として提供するビジネスの「Airbnb」(エアビーアンドビー)だ。どちらも急成長のビジネスである。Uberの企業価値は今や数兆円を超えると聞く。

 これらはサービスイノベーションの典型だと言われる。その基本コンセプトは何か。筆者はビジネスモデルの観点から見て、「分散したわずかな未利用資源のネットワーク化によるビジネス価値化」と読む。

「日生のおばちゃん」も「クックパッド」もその一つ

 その原型は日本にも見いだせる。例えば、高学歴主婦を分散する未利用資源と見なし、「ヤクルトレディ」や「日生のおばちゃん」、「ベネッセの赤ペン先生」の事業が可能になったと言える。

 最近では主婦の知の塊である料理レシピをサイト上に集めた人気サイト「クックパッド」もその一つとみなせる(そもそも投稿サイトとは未利用資源を集めるプラットフォームのことだ)。

 また、散在する狭く未利用の空き地をセンサー付きの機械で管理し情報ネットワーク化すれば、それは「パーク24のタイムズ事業」になる。また、機械化とネットワーク化でサービス価値を提供するという意味では「セコムの警備事業」も同様に見なせるだろう。

 このコンセプトをさらに進展させたのがUberやAirbnbに他ならない。自動車の後部座席や独立した子どもの空き部屋といった、それ単体だけでは事業価値にし難い、わずかで分散した空間を未利用資源として発見・認知し、それらを一時的に使用したい人々とマッチングするネットワーク化とプラットフォーム化を行ったのである。

かつてこのモデルは「グリッド」

 かつて我々は、このモデルを「グリッド」と呼んでいた。例えば、パソコンもネットワーク化すれば、スパコン並みの計算と活用が可能になる(グリッドコンピューティングサービス)。また、リユースやリサイクルも、中古品や廃棄品となった資源の再活用化であり、それは資源の時系列的シェアとも言えるだろう。

 単体ではビジネス化が難しい未利用のモノ・空間・時間等を資源と見なし、それらのネットワーク化を通じてビジネス価値化すること、それがサービスイノベーションの要諦なのだ。しかも最近は、ICTを駆使すれば比較的簡単に事業化できる。

 さらに言えば、シェアで価値を創るという発想は、実は、オープンイノベーションとも通じる考え方だ。自前主義に固執せず、他者と技術や営業をシェアする。

 つまり、シェア発想は、実はサービス業だけでなく、製造業にも求められる考え方なのだ。我々の周りには、まだまだ、わずかな未利用資源があるはずだ。それを見いだせるかは、我々の問題意識にかかっているのである。

ところで詩人の相田みつを氏に「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」という作品がある。彼はシェアリングエコノミーの唱道者だったのかもしれない。

(文=妹尾堅一郎)

       

【略歴】せのお・けんいちろう 慶大経卒、富士写真フイルム勤務を経て、英国立ランカスター大経営大学院博士課程満期退学。産能大助教授、慶大院教授、東大先端科学技術研究センター特任教授、九州大客員教授を経て現職。一橋大院商学研究科MBA客員教授。

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