京都の寺で運用界イチロー目指す、ヘッジファンドGCIが資金も – ブルームバーグ

Home » 08金融 » 京都の寺で運用界イチロー目指す、ヘッジファンドGCIが資金も – ブルームバーグ
08金融, ヘッジファンド コメントはまだありません



東京の騒がしさから離れた京都市の平安神宮近くにある明道寺。ヘッジファンドのGCIグループはこの寺を改装し、資産運用の研究や世界トップレベルのファンドマネジャー育成に向けた「京都ラボ」を17日、立ち上げる。

  庭石を配し、こけむした中庭を眺める本堂を利用した広間には、木製の大きな机が置かれている。大学院生ら研究者5、6人を集め、GCIのファンドマネジャーやアドバイザーの大学教授らと議論。人工知能(AI)などを駆使した運用モデルや理論を構築し、実用に耐えられそうなモデルは、GCIの自己資金を使って実際に運用を試みる。

  GCI創業者の山内英貴氏(53)は、日本では「メジャーで活躍するイチローのようなトッププレーヤーが存在しないと運用力が強くならない」という。最前線で働く金融のプロと金融工学や情報工学の研究者が融合する京都ラボは、トッププレーヤー育成の「最短距離になり得る」と強調する。

  長引く超低金利で年金や生保などが運用難に陥る中、1750兆円の個人資産の効率的な運用は重要な課題。金融庁も「資産運用の高度化」を重点施策の1つに掲げる。日本橋・兜町を拠点に東京を国際金融センターにする構想もあるが、山内氏はデータ処理を繰り返すモデル運用の開発には「ノイズと欲望が多すぎる」として、京都の古寺を選んだ。

  日本では金融分野での産学協同は遅れているのが実情。立命館大学理工学部の足立高徳客員教授は、米国の大学は企業のデータを存分に使って成果を挙げているのに対して、「日本はアカデミアの理論は進んでいるが、大量のデータを使うことが必要な最近の研究では企業に比べて貧弱なデータでしか検証できていない」と話す。京都ラボは「科学的に取引作法を研究しようという若者に、実践につながる環境で研究機会を与えている」と評価する。

トップレベルの運用者

  GCIグループは東京大学経済学部との産学協同を通じて、トップレベルの運用者を育成した実績がある。東大大学院経済学研究科で金融システムを専攻しながら、インターンとして実務に携わった山本匡氏がその一人。現在は同社でクオンツ運用しており、その運用戦略は2016年に30.51%のリターンを上げた。

  英調査会社プレキンによると、山本氏が運用するファンドの運用成績(2016年)の世界ランクはシステマティック運用部門で4位、マクロ戦略部門で10位 。山内氏は京都ラボで「そういう人材を出していきたい」と語る。

  金融や運用の分野は、欧米では経済学にとどまらず、物理学や情報工学などの理系研究者も共同で横断的に研究に取り組んでいるが、「日本は縦割り」と京都大学理学部の青山秀明教授(素粒子論)は指摘する。AIなど時代に対応するには「広い視野が必要だが、日本では場が限られ、若い研究者が参加する道が少なく、産業界に出て行く道も狭い」と話す。京都ラボには理系研究者も参加できる。

  研究者との共同チームのほかに、金融工学やITの専門的知識のない一般参加者(最大10人)のチームも発足させる。20代から60代と年齢も職業もばらばらなこのチームは、個人向けに投資教育活動している野川徹氏が率いる。同氏は「人生経験があるほど面白いロジックができるし、若い人からは常識にとらわれないアイデアが出てくる」と、思わぬ着想に期待している。

  学術環境の整った京都という地の利も人材育成に適しているという。京都府には34の大学があり、人口10万人に対して1.3校の割合で、人口の1.3%が学生といずれも全国1位。外国人も多く、山内氏は「若くて有能なグローバルな人材を引きつけ、伝統と創造性が一緒になって魅力的」と話す。

シードマネー

  半年から1年程度で実用化の可能性があると判断された運用の理論やモデルについては、GCIキャピタルの自己資金を元手(シードマネー)として実際にテスト運用する考え。シミュレーション通りの運用が確認できれば、GCIアセットマネジメントのマルチ戦略の1つに組み入れたり、ファンド化する可能性がある。
  
  米国の公的年金や財団などでは新規設立ファンドに対して、一定条件下で当初の運用資金を預ける「新興運用者育成プログラム」が一般的だ。山内氏は、運用者育成には「開発したモデルを動かす環境とシードマネー」が必要と話す。それでも1年に1個、本当に使い物になるものができるかどうかという。

  孤児だった主人公が悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされて覆面レスラーとして活躍するアニメ「タイガーマスク」になぞらえて、山内氏はこう言う。「これは資産運用版の虎の穴のようなプロジェクトだ」。




(第2段落を加筆しました.)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE



コメントを残す