原発事故受け太陽光発電が活発化 中国電力は近く条件付き買い取りに … – 山陽新聞 (会員登録)

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ゴルフ場跡地を利用した「久米南メガソーラー発電所」(岡山県久米南町)=米国GEグループ提供

節税対策で田んぼのなかに建設されたソーラー設備=岡山市中区高屋

岡山大経済学部の中村良平教授

 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故から11日で丸6年。同事故を契機にさまざまなエネルギーを組み合わせて安全・安定供給を目指すエネルギーミックスの必要性が指摘され、翌2012年に電力会社による再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(FIT)がスタートした。中国電力管内で稼働(接続済み)している太陽光発電(ソーラー)の総出力(17年2月末現在)は333万kw(キロワット)に達し、同電力の点検中の島根原子力発電所2号機(松江市)と、建設中の同3号機(同)を合わせた発電容量の約1.5倍を突破。買い取り枠の空き容量は37万kwとなり、同電力の全量買い取りが終了するのは時間の問題と見られている。岡山県内ではゴルフ場跡地、塩田跡地などいたる所にソーラーパネルが出現、地域住民が参加した環境運動の一環としての取り組みも進んでいる。クリーンエネルギーとして市民生活にすっかり定着した太陽光発電。普及の現状と今後の動向を探った。

稼働済み、計画分を合わせ、原子力発電の容量を上回る

 FITは2009年に各電力会社が単価を決定して、太陽光発電の余剰電力を買い取る制度としてスタート。11年の東日本大震災の福島第1原発事故を受け、翌12年7月に太陽光以外の風力、水力などにも対象を広げ、国が全国一律の単価を導入して電力会社が全量(太陽光の10kw未満は余剰電力のみ)を買い取る制度に移行した。制度が初めて適用された12年度は太陽光発電の接続済み(稼働)出力が50万kw前後だったが、15年度は4月に「接続済み」(稼働)と「接続申し込み済み」(今後稼働を予定)を合わせた総出力が483万kwに急増。その後も設備の計画、稼働件数が増え続け、17年2月末現在で623万kw(接続済み333万kw、接続申し込み済み290万kw)に達した。出力容量は現在稼働中のものだけで点検中の島根原発2号機(82万kw)、建設中の同3号機(137.3万kw)の1.5倍を上回る、今後の稼働予定分を合わせ623万kwがすべて稼働すれば、島根原発と計画中の上関原発1、2号機(山口県上関町、計274万kw)を合わせた原発総出力(約500万kw)をはるかに上回ることになる。

 そのうち岡山県内が16年10月末現在で稼働中のものだけで約95万7800kw(6万9647件)、うち1000kw以上のメガソーラーは総出力約22万4900kw(107件)。総出力規模では全国15位前後にランクされている。県内の大規模施設ではすでに米国のGE(ゼネラルエレクトリック社)グループが建設した「久米南メガソーラー発電所」(久米南町、3万2000kw)、「美作武蔵メガソーラー発電所」(美作市、4万2000kw)が昨年中に稼働。瀬戸内市の錦海塩田跡地に建設中の全国最大規模のメガソーラー(約26万kw、標準家庭の約7万世帯分)が19年4月の稼働を予定している。10kw未満の家庭用ソーラーも10軒に1軒の割合で設置され、普及率は全国11位にランクされる。市街地、住宅地、塩田、ゴルフ場にソーラーのある風景は日常的となり、市民生活に完全に溶け込んでいる。県環境文化部では「初期に県から補助金が出たことや、瀬戸内の少雨の気象条件を背景に太陽光発電が伸びた」と見ている。

市民が参加したコミュニティーづくりに発展

 太陽光発電は単なるエネルギー源の確保に留まらず、市民が参加したコミュニティーづくりの一環として、様々な波及効果を上げている。岡山県内では太陽光発電事業を市民らで立ち上げ、環境問題に取り組むケースも増えている。NPO法人「おかやまエネルギーの未来を考える会」(エネミラ、岡山市北区南方)ではこれまでに同市内や倉敷市、西粟倉村などで10基(4~48.68kw)、同「エコネットワーク津山」(津山市山北)でも3基(10~42kw)の〝市民発電所〟を設置、さらに近く各1基増設する計画がある。いずれも地元の自治体と提携し、公共施設の建物の屋根などを無償で提供してもらい、ほぼ全量を中国電力に売電している。売電した益金は地域住民を対象にした環境学習の経費などに充て、出資者に利息分として地元店舗で使える買い物券を支給するなど、地域還元するケースもある。エコネットワーク津山の堤宗之さんは「バイオマスや風力などは設備資金が高額になるため、市民運動としては太陽光が最適。利息や益金は地元での環境学習経費として地域に還元でき、コミュニティー運動のツールとして非常に有効」と話す。

 原子力発電に反対するグリーンコープ生活協同組合おかやま(岡山市北区下中野)では、近く太陽光発電施設をつくり中国電力に売電、原発に頼らない新電力事業者から電気を購入する。今秋には希望の組合員を対象に電力を供給する計画も立てている。同生協の佐々木和宏専務理事は「市民の環境意識を高め、最終的には脱原発運動につなげていきたい」と張り切っている。

 真庭市のバイオマス事業に関わってきた岡山大経済学部の中村良平教授は、再生可能エネルギーの地域での取り組みに注目してきた。その一つがバイオマス事業にまちぐるみで取り組んでいる和歌山県日高川町。住民が1万人規模の過疎地の同町は林業の活性化を狙いに木片をミクロン単位のパウダー状燃料に加工する技術を開発。町内の温泉にパウダー燃料専用のボイラーなどを設置している。木片を集荷してくれる林業家に地元の買い物券を提供し、低コストで原材料を調達している。中村教授は「商品券を使って地元の店でお酒でも買って飲んでもらう〝ばんしゃく〟(晩酌)事業を始めたところ、地元で大いに盛り上がった。太陽光は産業として雇用などの波及効果は期待できないが、地域が環境という共通したテーマで交流することで、地域活性化への効果はある」という。

買い取り枠の空き容量は37万kw

 同電力管内の全量買い取り量は当初の計画枠の94パーセントが埋まり、残りの買い取り枠はわずか37万kwを残すのみ。残り枠について「北海道電力や九州電力など他の電力会社ではすでに接続可能容量を超えているところもあり、当社管内もいずれは満杯になる可能性がある」(中国電力本社)としている。全国の電力会社では北海道、東北、北陸、九州、四国などがすでに受け入れ可能量をオーバー。各社は売電側の事業者などが無制限の出力抑制を無補償で受け入れる「指定ルール」を条件に新規契約を受け付けている。中国電力では現在、10kw以上を対象に年間360時間(日中計算で約1カ月)までの無補償の出力抑制を条件に新規契約を受け付ける「年間360時間ルール」を導入しているが、受け入れ可能量がいっぱいになれば四国電力などと同じように「指定ルール」に移行する予定だ。同電力岡山支社では「再生可能エネルギーの活用は長期的な観点から取り組む。出力抑制を行う必要が出た場合は、10kw以上の大規模な太陽光発電設備から始め、10kw未満の家庭用ソーラーは、10kw以上の出力抑制後に抑制を行うこととなっている」としている。

割高な調達コストは国民負担

 電力会社が買い取り枠を限定しているのは、太陽光発電が日中、気候によって安定供給を左右されることが主な理由。加えて割高な電力を買い取るための賦課金が国民(ユーザー)負担となっていることもある。太陽光発電の1kwhの発電コストは2014年度試算で約30円、火力の13.7円、石炭12.3円、原子力約10円よりも割高になっている。その割高なコストは賦課金として国民の電気料金に上乗せする形で賄われている。結果、太陽光発電の容量が増えるに従って賦課金は高くなり、13年度の0.35円(税込み)から14年度0.75円、15年度1.58円、16年度は2.25円にアップ。16年度ベースでみると標準家庭で1カ月675円の賦課金を支払っていることになる。全量買取制度が先行していたドイツなどでは国民からの高い電気料金への不満が高まり、制度の見直しを余儀なくされたケースもある。

 ビジネスとしてのソーラー事業も買い取り価格の低下を背景に運用が厳しくなっている。制度がスタートした12年度は10kw以上の発電設備が税別で1kwh当たり40円(10kw未満40円)だったのが、16年度は24円(同33円)と、事業用売電の価格は半値近くに下がり、太陽光パネルなど資材が値下がりしても採算が厳しいのが現状。このため国の認定を受けたにもかかわらず、7割近いメガソーラーが未稼働のままだ。設備認定済み用地を全国で40件以上抱えていた岡山市内のある不動産業者は、「どこでもとりあえず認可を取っておいて、将来権利付きの用地として転売し金にしようというブローカー的な業者も横行した。発電に不向きな土地も多くあり、整備費などを入れると採算が合わないケースが山積している」という。10kw未満のソーラー付き住宅を施工販売している同市内の業者も「ソーラー付き住宅は余剰電力を売電して家のローンを払おう、というのが売り文句だった。だが、最近は売電での採算が取りにくく、自家消費分だけの発電を目的にした5kw前後の小型設備が主流になっている」と厳しい表情だ。

バイオマスや風力発電に国はもっと支援を

 福島第1原発事故に伴い、全国の原発の大半が停止する中、国は30年時点での需給見通しの電源構成を再生可能エネルギーが22~24パーセント(原子力は20~22パーセント)と設定、うち太陽光発電は全体の7パーセントを設定している。経産省で設備認定を受けている全国の太陽光発電の総出力は、すでに7パーセントを超えていることから、ソーラーブームはすでにピークを過ぎたとも言える。エネミラの廣本悦子会長は「買い取り枠(出力制御枠)の設定は、原発を含む既存エネルギーの接続容量を入れて設定されたものなので、原発が停止し先行きが不透明な原子力発電を極力制限して太陽光の枠を増やすべきでは」と訴える。中村教授も「再生可能エネルギーは地域や市民が環境問題として取り組みやすく地域を元気にする。太陽光が制限いっぱいなら、他のバイオマスや風力などの起業化や地域の取り組みを国はもっと支援すべきだ」と提言する。

<固定価格買取制度> 風力、水力、バイオマス、地熱の再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が一定価格で買い上げる仕組み。化石燃料(液化天然ガス、石油、石炭など)の発電ウエートを引き下げ、CO2排出量を抑制することで地球温暖化の抑制やエネルギーの安定供給を図るのが狙い。同種の制度はヨーロッパの多くの先進国が取り組んでいる。一方で電力会社が買い取りに要した割高な費用は、市民など利用者側の電気料金に賦課金として上乗せされる。再生可能エネルギーが普及するほど賦課金は高くなる。






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