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2017年03月17日

今を生きる/ ジャパネットたかた創業者 髙田 明氏

企業家倶楽部2017年4月号 核心インタビュー①

2015年1月、社長の座を長男の旭人氏(現社長)に譲り、2016年1月、自らが番組に出演し、人気を博したテレビショッピングからも引退して1年が過ぎた。長崎県平戸の小さなカメラ店から年商1700億円を超える優良企業にまで成長させた秘訣は何か。髙田氏は、「現在のジャパネットたかたがあるのは、『今を生きる』ということを一生懸命にただやってきた結果」と語る。「伝える」ことに心を砕き、お茶の間の客と真摯に向き合ってきた一人の企業家の生き様を聞いた。
聞き手:本誌編集長 徳永健一

初の自著を出版

問 「伝えることから始めよう」というタイトルも髙田明さんのイメージに合致しています。このタイトルにした狙いは何でしょうか。

髙田 実は最後までどちらにしようか悩んだ言葉がありました。「今を生きる」という言葉を入れたかったのです。タイトルについては、編集部とも長い間議論し、結果的にはシンプルに「伝えることから始めよう」に決めました。

 仕事をしていても、伝えたつもりが、伝わっていないことは皆さんもよくあるでしょう。そのことが原因で問題が生じたり、対立が起こったりします。世の中の多くの問題を解決するヒントになればと思ったのが本を書くきっかけです。

問 「今を生きる」とは、愚直で地道ながらも大切なことですね。この本の中で、髙田さんは「『過去』と『他人』は変えられない」、「しかし、『未来』と『自分』は変えられる」と書いていました。未来志向で前向きになる言葉です。そのように考えるようになったのは何故ですか。

髙田 それはある方の言葉なのですが、結論から言えば、明日を変えるのは今しかないということです。過去に起こったことはどんなに頑張っても変えられません。一方、未来も変化が早く、3年後や10年後のことを考えても空論にしか過ぎません。未来を不安に思って悩んでいたら、今が疎かになってしまいます。そう、変えられる未来を作れるのは、今しかありません。この本で一番伝えたかったことは、「今を生きる」ことです。

 それでは、今何をすれば良いのか分からないという人もいるでしょう。そんな時は、「今最低でもこれをやらなければいかんぞ」ということから取り組むことです。脇目を振らないで、今やるべきことに集中している人や会社が変化に対応も出来るし、変化を創っていけるのです。

 私自身がスタジオで「どうしたら伝わるんだろう」と悩みながら何度も試行錯誤して、1つの商品をどのようにしたら魅力が伝わるかと考え続けたから、工夫も生まれました。この過程を通して、段々成長をさせてもらいました。それが今を生きるということに繋がってきます。

問 髙田さんのように今、目の前にある課題に一生懸命取り組んでいると工夫も出来るし、お客があっと驚くようなアイデアも出てくるのですね。

髙田 どうしたら伝わるだろうかと真剣になって、次の新しい突破口を探していくのです。だから机の上でいくら考えても、現場に立って行動しないと現状は変わらない。直感力や変化対応力は今を生きていることによって、その人に備わってくるものであると私は思います。色んなビジネス書を読んでも、言葉は違えども皆同じようなことが書いてありますね。

 どんな偉い人でも10代20代といった若い頃から直感力や変化対応力が備わっているわけではありません。いかに続けてやっているかという真剣の度合いが深ければ深いほど力が付いてきます。

問 経営に一線を引き、最近、ゴルフが趣味だと伺いましたが、調子はどうですか。

髙田 スコア90切りを目標にしていますが、なかなか難しいですね。でも、ゴルフを通して学びがあります。

 
 通販の世界で30年の間、何万回もスタジオに立ち、伝え方の練習をしていたから上達したのに、ゴルフではほとんど練習に行きません。学んだ理論をもとに1万回練習したら上手くなるに決まっています。しかし、私はゴルフの本を読んで理屈で分かったつもりになっている。座学で上達すると思っている自分がいます。私はスタジオで学んだ経験がゴルフでは活かされていないことに気付きました(笑)。

 初の自著を出版

『伝えることから始めよう』高田 明著

東洋経済新報社(1,600円+税)

成功体験にとらわれない

問 ジャパネットたかたは、ラジオショッピングが転機になり、テレビショッピングでさらに事業を拡大、通販業界で大成功を収めました。その過程で大きな失敗はありませんでしたか。

髙田 私はやらなかった失敗はあっても、一生懸命にやった失敗はないと思っています。毎日300%の力で取り組んでいるという自負がありますから、他人から失敗に見えても、私には試練と映ります。

 多くの人は失敗したことを後悔するのではなく、ベストを尽くさなかったことを後悔するのではないでしょうか。

問 失敗をどう捉えるかで仕事にも影響がありますね。

髙田 毎日多くのテレビショッピング番組を放送します。本番が終わると全てのスタッフが参加し、必ず反省会をします。伝えたい想いをちゃんと伝えることができて、思った通りの売れ行きになればいいのですが、結果が出ないときがあります。

 この反省会でもっとも重要なことは、売れなかった理由を探すのではなく、売れる理由を探すことです。失敗の中から、次に活かせる可能性を見い出し、次はどうするかを話し合うことです。

 商品が売れているときも、毎回同じことをしていては、お客様に飽きられてしまいます。日々、工夫をして変わることが重要です。

問 例え売れたからといっても、毎回同じことをしていてはいけないのですね。成功パターンを捨てる。それは勇気のいる決断です。

髙田 人は失敗すると反省し、今のままで良いかと考えます。反対に成功するとどうしても同じやり方を続けたくなるものです。しかし、それでは成長や発展はありません。

 
 世阿弥は、観客の心に新鮮な印象を残したものだけが、すなわち花だと説いています。舞台に必要なのは花だと考えていました。花は新鮮さと驚きが全てです。一度演じて好評だからといって、同じやり方を繰り返しては、魅力は消え失せてしまいます。

 世阿弥は今で言うイノベーターではないでしょうか。演技や構成にあらゆる面で変革を起こし続け、その地位を築きました。同じ場所に留まらず自己更新を続けたのです。ビジネスも同じですね。ワンパターンだと飽きられてしまいます。失敗から学ぶことも重要ですが、うまくいっても成功体験にとらわれないことが長く活躍できる秘訣ではないでしょうか。

事業承継には覚悟が必要

問 2015年1月社長交代、16年1月番組出演卒業。それから1年経って、もし1つだけ遣り残したことがあるとしたら何かありますか。

髙田 会社に対しては、社長を交代してもう2年経ちましたから、アドバイスを求められたら、テレビでもラジオでも何でもしますが、自分が再び前線に立つということはありません。

 今日も1000人ほどの前で講演をしてきましたが、事業承継には皆さん興味があり、半分の人が手を挙げていました。事業を譲渡するのは覚悟がいります。逆に言えば、私は覚悟があるから社長を交代しました。

 それでは不安は無いかといったら、当然不安もあります。だけど次の社長を信じたら期待もあるではないですか。私は会長職には就かず、完全に経営から離れました。しかし、会長職のある会社もあるでしょう。

 講演でお会いした若い社長から「会長が口出して困る」とよく相談を受けます。そうではなくて、社長は耳を傾けてあげるだけでいいのです。そして自分が好きなように決めればいい。そう話すと皆笑います。話も聞かないで入り口でシャットアウトしたら創業者だって怒ります。

 
 私は言い残したことはもうありません。いつも心の中で応援していますよ。新しい社長は上にたつと自分で決断しないといけません。会社のすべてのものに最終決裁者となるわけです。その経験を積めば積むほど経営者として成長します。

問 社長交代して会社で何か変わったことはありますか。

髙田 はい、休暇制度など変わっています。世の中が日々変わっているのですから、会社の有り様も変わっていきます。高齢化社会が進めばまた変わります。地球温暖化など環境が変わればさらに変わります。いろんなことに影響されて世の中は変わっていくのですから、それにトップが変化対応できなかったら企業は生き残れません。それは簡単なことではないですが、トップになる人の課題ですね。

問 御社は以前から社員を大切にされていますが、顧客満足と社員満足の関係はどうお考えでしょうか。

髙田 社員満足(ES)がなかったら、社員は顧客満足(CS)を作ろうとはしないでしょう。CSだけをつくるために社員が残業したり、給料も上がらない状態だったら、最終的には顧客満足は実現できません。

 
 企業は社員の人生を預かっているのです。大きくなればなるだけ社員の家族も含めたものを全部背負う責任があります。だから弊社はカメラ販売を始めたころは5人だったのが今は2500人、家族も含めたら約5000人の将来を背負っているわけです。

問 若い人に期待することは何でしょうか。

髙田 仕事のやりがいが何かと問われれば、結論は1つ「お客さんの笑顔を見ること」です。そこを感じたときに人は「仕事は面白い。やってよかった」と思う。最終的にはお客さんの笑顔を感じる社員の集合体を作っていくことではないでしょうか。まだ課題もあるし、難しいが、是非やり遂げてもらいたいです。 

問 髙田さんの今後の夢は何でしょうか。

髙田 人生、何を始めるにも遅すぎることはありません。世阿弥は、好機に咲いた一時的でやがては散ってしまう「時分の花」と比較して、生まれ持った才能に加え、努力の積み重ねによって高められた能力のことを「真の花」と読んでいます。

 
 私はやりたいことが沢山あります。あと50年、夢を持って今を生き続けていきたいと思っています。

P R O F I L E

髙田 明(たかた・あきら)

1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。74 年父親が経営するカメラ店へ入社。86 年「株式会社たかた」として分離独立。99年現社名へ変更。90年ラジオショッピングを期に全国へネットワークを広げ、その後テレビ 、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや携帯サイトなどでの通販事業を展開。15年1月同社代表取締役を退任。同年A andLive 設立、代表取締役に就任。14年第16 回企業家大賞受賞。

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