WRX STI スポーツモデルの未来 (1/3) – ITmedia

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スバルの新たなキーワードは「安心と愉しさ」だ。同社は元々、スポーツにおけるブランディングを図ってきたが、今ではスポーツの解釈を「速さ」から「愉しさ」にシフトしたのではないか。筆者が新型WRX STIに乗って確かめたいのは、スバルが「スポーツ」をどう消化し、どこへ進もうとしているのかと言う点だ。



 スバルのイメージとは何だろう?

 現在へ続くスバルブランドの基点を探せば、恐らくそれはレガシィの登場だろう。スバル車の再評価の大きな部分を担っているのはWRCでの華々しい活躍だ。だからレオーネからレガシィにバトンタッチして以降のスバルにとって、「スポーツ」は少なくともスバルのイメージの重要なキーワードの1つになっている。スバルがWRCだけでなくニュルブルクリンク24時間など、モータースポーツに積極的に参加してきた意味はそこにある。

安心と愉しさ

 そうした文脈を踏まえた上で、富士重工からスバルに車名変更したスバルの新たなキーワード「安心と愉しさ」を考えてみたい。正直なところ自動車メーカーの主張としては何も新しくないのだが、それ故に普遍的だ。

 「安心と愉しさ」と言われて筆者が思い出したのは「Safty Fast」。英国のスポーツカーメーカーであるMGが提唱した言葉だ。そして、恐らくは同じことを言っているこのスバルの「愉しさ」とMGの「Fast」の間に時代の違いが横たわっていると思う。MGの時代は「安全と両立した速さ」こそが重要で、安全であれば速いことは正しかった。

 スカイラインGT-Rの産みの親として知られた故桜井眞一郎氏は、かつて「クルマは人間が速く移動するために作られた。しかし今、速いことは必ずしも正義だと言われない時代だ。速さを正しいと社会が認めてくれない限り速いクルマは作れない」と言った。

テストが行われたのは修善寺のサイクルスポーツセンター。クローズドコースなのでハイスピード領域を試すことができる
テストが行われたのは修善寺のサイクルスポーツセンター。クローズドコースなのでハイスピード領域を試すことができる

 今、世界の自動車メーカーに与えられている使命は「交通死亡事故ゼロ」であり、二酸化炭素(CO2)の削減である。自動運転も電動化も全てそこに集約されるし、ZEV(ゼロエミッションビークル)やCAFE(企業平均燃費)という厳しい環境規制に直面する中で、かつて以上に、クルマが速く走ることは認められない時代になっている。

 特に厳しい環境規制は、たとえ安全であろうともCO2増大につながる速さに対して否定的と言える。もちろんエネルギーが完全にゼロエミッションで生み出されれば、新たな可能性があるのだが、水素にしろバイオ燃料にしろまだ道は険しいし、そもそもそこは国家レベルのインフラエネルギーの課題であって自動車メーカー単体でどうこうできる部分ではない。

 さて、そういう厳しい社会情勢の中で、スバルの全てとは言わないが、少なくともWRXというクルマは、モータースポーツで活躍するクルマを自分で手にすることができるというところに商品性の主眼がある。誰よりも速く走って勝つことを目標とする競技車両と、その基本を共有し、華々しい活躍のイメージを受け継いだ市販車という関係だ。ところが、すでに述べたように、市販車は安全と環境の問題に直面し、高性能車はその商品性に矛盾が生じつつある。そうした時代を見据えてスバルにとって歴史的に大事なキーワード「スポーツ」の再定義をしなくてはならない。

 スバルはそれに敏感に反応して、スポーツの解釈を「速さ」から「愉しさ」にシフトしたのではないかと筆者は考えている。なので、筆者が新型WRX STIに乗って確かめたいのは、スバルが「スポーツ」をどう消化し、どこへ進もうとしているのかと言う点になる。

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