年間4千人を新たに派遣するUTグループの人材獲得術――若山陽一(UTグループ社長) – エキサイトニュース

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人手不足の直撃を受けているのは派遣業界も同様だ。景気が拡大し工場稼働率は高い水準を維持しており、派遣社員への需要は非常に高い。その一方で派遣社員がなかなか集まらないという現実がある。ところが製造業派遣の大手、UTグループは、昨年4千人を新たに派遣し今年も同じペースで派遣先を増やし、年度末の派遣者数は2万人に達するという。同業他社が人材獲得に苦労する中、UTグループはいかにして人を手当てしているのか。若山陽一社長に聞いた。文=関 慎夫 Photo=佐藤元樹

年間4千人を正社員として採用

―― 人材派遣業界では、派遣してほしいという要請はあるものの人材の確保が難しく、要請に応えきれないという話をよく聞きます。

若山 同業他社の方からも、「人が全く集まらない」との声を伺います。でもUTグループの場合、昨年1年間で技術社員を4千人ほど増やしていますし、今年も同程度増える予定です。今期末には、約2万人を常時派遣することになりそうです。

―― それだけの人材をどうやって集めているのですか。

若山 当社は創業時から、基本全員正社員として雇用した上でお客さまに派遣していますが、こういうところはまだ少なく、3カ月や6カ月単位で派遣契約を結んでいるところが大半です。同じ派遣社員でも、当社は正社員契約ですから、安心して働くことができます。それと、当社の取引先は、全国に工場を持つ大企業向けが大半です。工場の多くは地方にあり、1つの工場には1千~2千人もの人が働いています。これほどの人材をその地方だけで確保するのはむずかしい。その点当社は全国展開しているため、全国から動員する力がある。それが取引先から評価いただいて、お互いより良い条件で契約を結ぶことができています。

 つまり、正社員として安定雇用することで人材が集まり、人材が集まるからより良い条件で派遣先を決めることができる。その好循環ができているということです。

―― 来年でリーマンショックから10年です。あの時、企業は一斉に派遣切りを行い、日比谷公園には年越し派遣村ができました。昔日の感があります。

若山 10年もたてば事業環境は大きく変わります。当時と今を比べると、お客さまにとって派遣社員活用の位置付けが大きく変わっています。あの頃はまだ、派遣社員は正社員の下と見られていて、だからこそ派遣切りのようにバッファーとして切り捨てられていた。ところが今は正社員、派遣社員を違う階層ととらえるのではなく、トータルでいかに戦力化していくかが、企業経営にとって重要なテーマになっています。

 人手不足の時代に、いかに労働力を調達、定着させ、スキルアップをして戦力化していくか。これを企業と派遣会社が一緒になって構築する時代になってきました。

取引先との深いパートナーシップ

―― 正社員として採用すれば、固定費負担が大きくなります。それだけにリーマンショックのようなことが起きると、経営を直撃します。大きなリスク要因ではないですか。

若山 だからこそ取引先と、より深いパートナーシップを結ぶ必要があります。リーマンショックでは当社の業績も悪化しましたが、その時に学んだのは取引先の中でのシェアが高いと、解約される順番が遅くなるということでした。製造工場には、複数の派遣会社が社員を派遣しています。そして会社ごとに派遣する人数が違います。この工場が人員を削減する時は、派遣人数の少ないところからカットしていきます。ですからわれわれはシェアを高める努力をしなければなりません。1つの工場にできるだけ多くの人間をチームとして派遣することを目指しています。

 派遣会社の中には、極端に言えば1万人の派遣社員を1万社に派遣するところも珍しくはありません。でもUTグループは、現在1万7千人の社員がいますが、派遣先は500社ほどにすぎません。単純計算で1社30人強。現在は1工場50人以上を目指しています。こうすることで、先ほど言ったように何かあった時のストレス耐性が高くなりますが、それだけではありません。

 チームとして派遣することで生産性は確実に上がります。収益も上がります。さらにチーム内での先輩から後輩への指導・教育によってスキルが上がっていくため、技術社員もやる気を持って働くことができる。1つの工場に多くの社員を派遣することにはお客さま、当社技術社員双方にこれだけの意味があるわけです。

 ですから取引先との契約では、できるだけ多くの人数をチームとしてお願いし、派遣期間もできるだけ長く、そして単価もできるだけ高くなるよう交渉します。派遣先にとっても、単価は高くても生産性の高いチームに長期間安定的に働いてもらうことができるので、得るもののほうが大きい。こういう関係をいかに構築していくかが重要です。

 最近では、ソリューション事業にも積極的に取り組んでいます。これは取引先の製造部門の社員を当社の社員に転籍し、工場をまるごとアウトソーシングするというものです。これはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の一種ですが、取引先とこうした関係を築くことができれば、より深いパートナーシップを結ぶことができると考えています。

―― 単に派遣社員を送り込むだけではなく、取引先の労務に深く関わるということですね。

若山 これだけ有効求人倍率が高い状況では、職場条件が悪ければ人は集まりません。そこで私たちは取引先と契約する時には50項目のチェックポイントにより、職場の提供する価値を明らかにします。その上でより魅力的な職場になるように提案もさせていただいています。それにより、取引先にも、そして社員にも信頼していただけると考えています。

社員の意識向上のための施策とは

―― 安倍政権の進める働き方改革では、同一労働同一賃金に向けて大きく舵を切りました。これまでは正社員と派遣社員では、同じ仕事をしていても賃金に大きな開きがあり、それが格差につながっていました。この同一労働同一賃金は、かねてから派遣業界が主張してきたことですが、大きく前進しました。

若山 日本の企業は職能給で賃金が決まってきましたが、私たちは職務給という考え方を確立してきました。派遣単価は働く内容によって決まるという考え方です。今後はさらに賃金の基準が変わってくるかもしれません。

 例えば最低賃金は、都道府県ごとに定められています。でも当社の社員の3分の1は社宅に入っていて、地域ごとの需要に合わせて日本国中を移動しています。こういう社員にとって、地域ごとの最低賃金は意味がありません。こうした実情に合わせるには、地域ではなく職務ごとの最低賃金という発想も必要になってきます。

―― 働き方改革の議論の中で、改善すべき点はありますか。

若山 少し労働者の権利保護のみに立脚し過ぎているような気がします。もちろん労働者の権利は大切ですが、雇用があって初めて権利が発生します。その意味で、経営者側からの視点がもう少しあっていい。働き方改革の本質は何かといえば、生産性の向上です。生産性を上げることで、長時間労働も減らすことができるのです。ところが今の議論では、単に残業を減らすことに眼目が置かれている感がある。これは対症療法にすぎません。風邪をひいて薬を飲むより、風邪をひかない体質になることを考えるべきです。

―― UTグループは社員教育にも力を入れています。派遣社員からエンジニアへのジョブチェンジも進めている一方、今年1月には本社近くに技術者研修センターもオープンしています。

若山 ジョブチェンジは「One UT」と呼んでいるもので、前期は148人がエンジニアになりました。

 UTグループは2021年度を最終年度とする中期経営計画で、社員の給料を20%上げることを目指しています。同じ仕事のままで20%上げるのは難しいですから、エンジニア職にジョブチェンジすることで給料が上がるチャレンジを促しています。

―― 意欲のある人はスキルを磨くことができます。社員の意識も高まるのではないですか。

若山 こういう制度があります、というだけではなかなか人は動きません。というのもエンジニアになったらどうなるか、というイメージが持てないためです。そこで、ムービーをつくって、先輩たちがどうやってエンジニアになったのか、エンジニアになることで仕事の中身がどう変わるか、分かりやすい形で示すことが重要です。それを自分に置き換えることで、前に進もうという原動力が生まれます。それが伝わる施策を引き続き進めていきます。

 今期は500人がエンジニアへジョブチェンジすることを目標としていますし、将来的には毎年1千人がエンジニアになるようにしていきたいと考えています。






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