新時代のクリエイティブプロセス 〜 PwCにとっての「破壊的革新」 – Campaign Japan

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「破壊」という言葉を聞いて、監査法人を連想する人はあまりいないだろう。だが昨今のテクノロジーの破壊的進化は、TBWA(実際、同社は「破壊」をモットーに名声を築き上げた)やアマゾン(表面上は全業界をあっと言う間に破壊)などと同様、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のような企業とも深い関わりがある。

デロイトなどと共に世界の4大会計事務所の一角を占めるPwC。安住する業界からの脱皮を図る同社を、広告界では脅威と見なす向きが多い。実際、PwCはマーケティング界の将来に強い関心を抱き、影響力の行使を画策する。ゆえに、クライアントが現在直面する「破壊的革新」を完全に理解していなければならないのだ。

PwCジャパンでその役割を担うのが、テクノロジー デジタルリード パートナー(この1月に新設された地位)の松永エリック・匡史氏。現在は丸の内に12月開設予定の「エクスペリエンスセンター」の準備を指揮する。

同氏はこれまでアクセンチュアやIBM、デロイトといった企業で20年間にわたりコンサルティング業に携わってきた。だが、そのキャリアは標準的ビジネスマンとは一線を画す。かつて多くの時間を過ごしたのは、会社の役員室ではなくレコーディングスタジオ。若き日はギタリストのスティーブ・ヴァイに憧れて練習に明け暮れ、プロのミュージシャンとして活動した。しかし日本では歌手に比べ、「ミュージシャンに対する敬意が欠けている」。やがてビジネス界に転身すると、アクセンチュアではメディアとエンターテインメント分野のビジネスを確立させた。

では、コンサルティング業界では「異端のコンサルタント」はより敬意を払われるのだろうか。これまでコンサルティングの規範にチャレンジしてきた同氏だが、「新しい挑戦はいつも簡単ではない」と語る。「コンサルティングを学びましたが、基本的に私はミュージシャンです。ですからいつも右脳を使います」。経験から言えるのは、「コンサルティング会社がクリエイティブの人々を取り込もうとすると、いつも問題が起きる」。その原因は「互いに異なる言語を使うから」。例えばエージェンシーでキャリアを磨いた(優秀な)クリエイティブは、物事の細部を丹念に見る。それに対し、コンサルタントは大きなヴィジョンから捉えようとする。更に典型的なコンサルタントは、自分たちの考えの方が重要視されると思いがちだ。加えて、勤務時間数や売上といった典型的なKPI(重要業績評価指標)をクリエイティブにも当てはめようとする。もちろんこうした試みは機能しない。

別の問題点は、どの企業でも税務担当者がいまだにデジタルビジネスを理解するのに四苦八苦していること。それを単にコンピューター関連のことと受け取る者もいるし、デジタルマーケティングと捉える者もいる。だが松永氏曰く、PwCは「破壊的革新」と定義する。既成概念を打ち破る可能性を持つもの全てを意味するのだ。「大手クライアントにとって最大の競争相手はミレニアル世代です」。大多数の企業が着実なアプローチ、あるいはベストプラクティスと考えることを、この世代は決してそうは思わない。「彼らはまず好きか嫌いか、気持ち良いかそうでないかを基準に判断します」。そうした思考回路をPwC幹部やクライアントに理解させることが同氏の使命だ。

松永氏は現在、“カタリスト(触媒や促進の意)・セッション”と呼ぶ催しを主宰する。これは仕事の課題を解決するため、禅の手法からインスピレーションを得る試み。参加者は「啓発される」ために、過去の成功や先入観を一切捨て去らねばならない。その過程は3段階に分かれ、最初の「スキャニング」で過去の重荷を取り去り、次の「焦点化」で未来のソリューションを探し、そして最後の「アクション」で実行可能なプランを立案する。たいていの人々は最初のスキャニングの段階で苦労するという。人間が思考過程を変えるのがどんなに大変なことか、同氏は人々が新しい音楽を生み出そうといかに苦闘し、挫折してきたかを引合いに出した。

特に最後の段階は重要 −− 参加者がセッションの後に一杯やって、全部忘れてしまうということにもなりかねないので −− だが、要は予測できない新たな未来に向けたソリューションを導き出すこと。「破壊的革新は既に起きていることを皆が知るべきです」と松永氏。「金融業界、というものはもはや存在しない。たいていの人々は、銀行イコール金融だと考えます。しかし今では、コンビニエンスストアのローソンやセブン-イレブンが銀行業を営んでいる。ソニーはどうでしょう? 同じく銀行を持っています。既に金融業界というものは崩壊しているのに、ほとんどの最高経営責任者(CEO)たちはそれを理解できていません。もしこういう状況を彼らが理解すれば、新しいビジネスに対してもっと柔軟になれるでしょう」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

この記事は、日本企業における斬新なクリエイティブプロセスやブランディング、マーケティングへの取り組みを特集するインタビュー・シリーズの第2回です。






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