世界を変えた天才に学ぶ「思考の習慣」 – 日本経済新聞

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 国内で1日に刊行される新刊書籍は約300冊にのぼる。書籍の洪水の中で、「読む価値がある本」は何か。書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介するコラム「若手リーダーに贈る教科書」。今回の書籍は「超ロジカル思考 『ひらめき力』を引き出す発想トレーニング」。ロジカル(論理的)に考えるだけでは解決しない課題に取り組むため、新しいモノの見方を発見する力や直感力を鍛える方法を解説している。

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高野研一氏

 著者の高野研一さんは、人材コンサルティングなどを手掛けるコーン・フェリー・ヘイグループの社長です。神戸大学経済学部を卒業し、シカゴ大学ビジネススクール(MBA)を修了。大手銀行やコンサルティング会社などを経て、ヘイグループ(現コーン・フェリー・ヘイグループ)に入り、2007年に現職に就任しました。著書に「カリスマ経営者の名著を読む」(日経文庫)などがあります。

■世界を変える発想、トレーニングで可能に

 携帯電話のあり方を変えた米アップルのスマートフォン(スマホ)、iPhoneが世に出たのは07年のことでした。当時、世界ではフィンランドのノキアが4億台以上の携帯を販売し、市場の4割を占める強さをみせていました。ところが、その後10年の変化に対応できなかったノキアは取り残され、iPhoneを知らない人の方が少数派になっています。

 16年の株式時価総額の世界ランキングをみると、アップルが首位、グーグルの持ち株会社であるアルファベットが2位で、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックを加えた米IT(情報技術)関連5社がトップ10に入っています。こうした会社は、スマホやインターネット検索、ネット通販や交流サイト(SNS)などを通じて、私たちの生活を一変させました。さらに人工知能(AI)や自動運転など、世界を変える可能性を秘めた分野にも挑んでおり、市場もこうした点を高く評価している形です。

 アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏やアマゾンを築き上げたジェフ・ベゾス氏らは、どうやって世界を変えるようなアイデアを生み出したのでしょうか。著者は「彼らが前例や旧来のロジックに囚(とら)われない解決策を見いだせたのは、自分の『モノの見方』を変える力を持っていたことによる」と分析します。

 普段我々は、自分の「モノの見方」を意識することはない。いや、人間の脳はそれを意識できないようにできているのだ。ところが、あるとき何かのきっかけでモノの見方が大きく変わる経験をすると、「世界の見方はひとつではなかったのだ」ということに気づかされる。
(プロローグ 新しいモノの見方を発見できる人たち 16ページ)

■「論理の限界」を超えよう

 経営環境の変化は一段と加速し、しかも的確に予測するのは難しくなっています。著者は「こうした先の見えにくい世界を相手にする場合、モノの見方はひとつではないことが多い。ロジカルに最適解を求めようとしてもでてこないのだ」と説きます。業界や社会の常識を動かぬ基盤として論理を積み上げていくような思考法では、変化に十分対応できないと分析するのです。

 情報革命によって我々が拠(よ)って立つ前提条件が大きく変わるときには、むしろ常識に囚われない“素人”の方が強みを発揮する。玄人には業界の常識を疑うことができないが、素人はそうしたモノの見方から自由になれるからだ。
(STEP4 ベゾスに学ぶ「常識から自由になる」トレーニング 144ページ)

 常識や先入観にとらわれず、視野を広げてビジネスリーダーに必要な直感力をつけてほしい――。この本は「経験したこと→経験のないこと」「過去→未来」といった視野の広げ方を示しながら、様々な思考トレーニングを通じて発想力、直感力を養うよう構成されています。

 ジョブズ氏やベゾス氏のほか、グーグル創業者のラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンの両氏、ソフトバンク創業者の孫正義氏、セブン&アイ・ホールディングス元会長の鈴木敏文氏らを取り上げ、その発想法や成功の秘訣、失敗の原因を解き明かしているのも読みどころです。

■「無意識」がひらめきをつくる

 直感力を培う方法として、著者は「無意識」の働きにも注目します。アイデアがひらめいて「あっ」と声が出てしまうような瞬間、それは何かほかのことをしているときに訪れるという経験は、だれにもあることでしょう。無意識を刺激する方法として、著者は行ったことのない場所に行き、会ったことのない人に会うよう勧めます。

 それによってこれまで触れたことのない刺激が、五感を通じて自分の中に入ってくるからだ。(中略)ある日ひょんなことから新しい経験と古い経験が検索に引っかかり、組み合わされ、今まで自分の中に存在しなかったモノの見方ができあがり、突然意識の世界に飛び込んでくる瞬間を経験できる。
(STEP1 グーグル創業者に学ぶ「見えないものを見る」トレーニング 44ページ)

 異なる文化に触れ、新鮮な刺激を受けるには、海外旅行や読書も効果的です。変化の激しい社会で生き抜く「思考の習慣」を身につけるきっかけになる一冊です。

◆編集者からひとこと 雨宮百子

 本書は、15年に出版した同名の書籍を文庫にしたものです。今回、改めて著者の高野さんにお会いしましたが、常に好奇心が旺盛で、本書で紹介した「思考の習慣」を自ら実践されています。話の途中で「なぜ?」と聞かれることが多く、答えに詰まることも、しばしばでした。自分がどれだけ「常識」にとらわれているのかということを思い知らされました。

 本書には、そんな常識を離れ、別の角度からモノを見る思考のトレーニングが盛り込まれています。成功を収めたビジネスリーダーの考え方や目の付けどころも、きっと皆さんの参考になると思います。

「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。

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