人の力をいかす日本へ(1) – 日本経済新聞

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05人事・人材開発, 継続雇用制度 コメントはまだありません



 人手不足が成長の壁になりつつある。働き手の確保の難しさを経営課題に挙げる企業も増えた。しかし発想の転換や働き方の工夫で、今は働いていない人を労働市場に迎え入れたり、仕事をしている人々の生産性をもっと上げたりすることは可能ではないか。

 労働意欲はあるのに、企業がまだ十分に活用していない人材は多い。代表例が女性と高齢者だ。

物流センターに託児所

 最新版の経済財政白書は、かつての経済成長が生産年齢人口の増加に支えられたのに対し、現在の緩やかな景気拡大は高齢者や女性が仕事に参加するようになった効果が大きいと分析している。ただし仕事に割く時間はまだ限られ、成長を制約しているとも記す。

 長らく日本の企業は「若くて元気な日本の男性」を基本に人を求めてきた。女性の活用はある程度進んだが、子育てなどでやむなく仕事を断念する人はまだ多い。働き手の確保と企業の成長のため、思い切った取り組みが望まれる。

 人手不足に悩むサービス業で、従業員向けの託児所開設が広がりつつある。大和ハウス工業は千葉県に建てる物流センターに600人の子供を預かれる託児所を併設する。託児所としては国内最大だという。ここで働く8000人のうち7割以上を、女性を中心とするパート社員で賄う構想だ。

 外食のフジオフードシステムも今年、店舗従業員の復職や採用に生かすため保育所を開設した。保育所不足が社会問題となるなか、課題解決を企業が先取りすることで働ける人を発掘、確保する。

 高齢者の「就業寿命」を伸ばす取り組みも本格化してきた。

 スーパーのサミットやマルエツは70代の人も働けるよう雇用条件を緩和した。マルエツはすでに全パート従業員の6%強を65歳以上が占める。約7割は継続雇用だが3割は新店開業などに備えた新規採用者だ。主婦の労働が難しい夜間などに重宝しているという。

 米国では平均年齢が70代の医療器具メーカー、ドイツでは中高年だけで動かす自動車の生産ラインなどの例がある。病欠に備えて皆が同僚の担当する仕事の技術を身につけておいたり、体に負担をかけず作業できる椅子を用意したりするなど、工夫を凝らす。

 日本では腰を曲げずに済む位置に棚を並べたハウス栽培施設が登場した。高齢者が働きやすい場づくりをめぐり、世界中で競争が始まっている。

 子育てや加齢による体力の衰えなど、これまで働くうえでハンディキャップとされてきた点を企業側の工夫や設備で補えば、戦力となる人の幅はぐんと広がる。こうした考え方は、女性や高齢者以外にも応用できる。

 例えば病気の社員への対応だ。クレディセゾンは、がんを含め病気の社員の復職支援プログラムを整備。短時間勤務制度などをとり入れ、病気を周囲に言いやすい雰囲気づくりも進めている。

 テルモはがん治療のためなら無給だが日数の上限なしで休める独自の制度を今年導入した。いずれも貴重な戦力の離職を防げ、「長く働き続けられるかどうか」を重視する最近の若者心理にも沿う。人材獲得にはプラスだ。

シェア経済の活用も

 採用方法も工夫の余地がある。デジタル技術を使ったデザインなどを手がけるチームラボ(東京・文京)は、ネットを経由したプログラム技術の提示や作品の提出だけで、書類審査なしに最終面接まで進める採用を実施している。

 技術や発想力に優れるが自己PRは下手な人材が世に埋もれるのを防ぐためだという。一般の企業もコミュニケーション能力に偏重した選考基準が自ら門戸を狭め、採用難を招いている可能性はないだろうか。一考に値する。

 個人の資産や技能を他人と共有するシェアリングエコノミーの進展にも注目したい。相乗り仲介の米ウーバーテクノロジーズは、日本でマイカーを使った料理の出前サービスを始めた。さまざまなサービス分野で、休日や空き時間を活用して働く人が増えれば、人手不足の緩和につながる。

 配送や移動、外国人向けの観光案内、翻訳、学習指導など、シェア経済の分野は広い。政府は各種規制の見直しを通じ、この流れを後押しすべきだ。働き手を増やすためにも、シェア経済を広げていきたい。






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