監査法人の適正意見とは-”お墨付き”という表現を、早急に改めた方が良いのでは:研究員の眼 – ハフィントンポスト

Home » 06財務・会計 » ABC/ABM » 監査法人の適正意見とは-”お墨付き”という表現を、早急に改めた方が良いのでは:研究員の眼 – ハフィントンポスト
ABC/ABM, 財務諸表 コメントはまだありません



新聞やテレビのニュース報道で、上場企業等の有価証券報告書に対して監査法人が発する適正意見を”お墨付き”と説明する事例を見ることがある。

しかし、”お墨付き”の語源を考えると、違和感を覚えるし、これは読者や視聴者に対して誤解を招きかねない表現なのではなかろうか。

“お墨付き”の意味するところを語源に遡ってみると、「幕府・大名から証明のために家来に与えた、黒印の押してある文書。比ゆ的に、権威者からもらった保証。」(*1)とある。

最近のテレビでは、NHKやCSの専門局を除いてあまり歴史物のドラマを放送していないために、一般的な認識が乏しいのかもしれないが、映画やテレビの時代劇でよく見られる例としては、家臣に対して出すのが所領安堵の書付であり、商人に対して渡すのが御用達の認定書であろう。

ところが、監査法人が上場企業等の財務諸表等に対して認めているのは、無限定適正意見の場合、”一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって、会社の財務状況を「すべての重要な点において適正に表示している」”(*2)ということである。

監査法人は法律(*3)に基づいて、監査対象企業のプロセスを確認しているだけである。適正意見を得られたからと言って、会計基準の遵守や表示の適正性を認定しているものの、事業内容そのものすべてについて適正であるという確認までしているものではない。

更に、表示の適正性に関してでさえ、近年でも時々見られるのは、過去の決算に対して適正意見を得ていた先の企業が、実は不適切な会計処理を行っていたという事実が、後になって判明するケースである。

時代劇における”お墨付き”は、絶対的な権力を持つ権威による承認であって、後日それが誤っていたというような事例は、権威者の沽券に関わる事態となるために、まず発生しない。

もちろん権威者が気まぐれで、”お墨付き”を撤回したり、内容を変更したりということはあるだろう。しかし、その”お墨付き”自体を誤っていたとは、自らの意地にかけても認めない。一種の権威無謬という立場に立つものである。

ところが、監査法人による適正意見は、処理や表示が適正であるという評価を示しているに過ぎず、それ自体は決して絶対の権威ではない。

現に、監査法人の適正意見を得ないままで有価証券報告書が提出され、当該株式が上場されて投資家によって取引されることもある。監査法人が絶対の権威者であるようなことはない。

結局のところ、メディアは一般的な視聴者にわかり易いと考えて”お墨付き”という表現を用いていると思われるが、それは語源に立ち返って考えると誤用であり、読者や視聴者の誤解を招きかねないために、早急に改めた方が良いのではないか。

監査法人やそれを監督する立場にある金融庁も、早めにメディアの誤用に対する是正に向けて何らかの対応をとってはどうだろう。

(*1) 『岩波国語辞典 第三版』 1979年

(*2) 分かりやすい「会計・監査用語解説集」 日本公認会計士協会HP

(*3) 会社法第436条第2項「会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。」

関連レポート

「年金カット法案」という決め付けに、若者は怒れ!

利益調整に関する財務指標に着目した信用リスク分析-「粉飾」に起因した企業倒産の予見は可能か?

3.11報道で気づくメディア・リテラシーの重要性

(2017年8月10日「研究員の眼」より転載)
メール配信サービスはこちら

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 年金研究部長
德島 勝幸






コメントを残す