欧州「ソサイエタル・イノベーション」とは – 日経ビジネスオンライン

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世界のイノベーション事情(1)欧州のイノベーション

2017年12月7日(木)

 「世界のイノベーション事情」といえば、米シリコンバレーを思い浮かべる読者も少なくないと思うが、これから2回は、欧州を取り上げる。

 理由は3つある。(1)ここでいう欧州とは主に欧州連合(EU)のメンバー国家を指すが、地域を挙げてイノベーション政策を推進している。(2)彼らのイノベーション政策や制度は米国とも日本とも違うが、社会や市民のためのイノベーションを目的としている。どちらかといえば社会的課題を多く抱え、それがイノベーションの起点ともなり得る点で日本の状況に近い。そして(3)今、シリコンバレーに限らず、イノベーションは世界の諸地域に広がった経済・経営活動であり、その重要な一極が欧州だからである。

地域「イノベーション・エコシステム」の台頭

 デンマークの首都コペンハーゲンからスウェーデンに伸びる全長16kmのオーレスン大橋を渡って約1時間。スウェーデン南部スコーネ地域の中核都市、ルンド市。今、この地域に世界的関心が集まっている。2019年完成予定で、中性子利用研究のための欧州最大のESS(欧州核破砕中性子源)の工事が進んでいるからだ。ルンド市では、世界最強と言われる陽子線形加速器、世界各国の研究所とスパコン間のデータ管理などの施設が集約され、クリーンエネルギー、食品、医薬、医療、ITなど各分野での基礎研究及び応用研究が進んでいる。

2019年完成予定のESS(欧州核破砕中性子源)に隣接する電子加速器研究施設 MAX IV(筆者撮影)

 同施設群にはルンド市庁舎、ルンド大学などが近接し、一大「イノベーション・エコシステム」(地域生態系)が形成されつつある。しかし、ここでの主眼は科学技術でなく、地域全体の「ソサイエタル(社会構造的)・イノベーション」にある。同市は「イノベーティブなルンド」をスローガンに、若者が未来のために活躍できる、グローバルな知識経済の中心のひとつとなることを目指している。人里離れた場所でなく、都市、すなわち人々や社会のまっただ中で最先端の研究開発が行われるのである。

 こういった思考で、社会と経済の発展のためと、イノベーションを位置づけ、企業(ルンドには、かつてソニー・エリクソンが本社を置き、今でもソニーモバイルコミュニケーションズのオフィスがある)、大学、自治体、市民を巻き込んだ活動を展開しようというのが欧州先進地域でのイノベーションの基本形であり、ルンド市及び周辺地域はその代表的存在といえる。

 ここから東北東へ約1000kmに位置する、フィンランドの首都ヘルシンキの隣町エスポー市。ここでも地域のイノベーション・エコシステム「EIG(エスポー・イノベーション・ガーデン)」が展開されている。

 主体はエスポー市、アールト大学、ノキアなどのグローバル企業、中小企業やスタートアップ企業などである。エスポー市はノキアの本拠地として知られてきたが、ノキアが携帯電話事業から撤退した後は行く末が危ぶまれていた。しかし、同地域が蓄積してきた知識資産、大学などをハブとするネットワークによって発展し続け、北欧のイノベーション拠点として人や資本を集めている。






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