市場と民主主義(十字路) – 日本経済新聞

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 欧米の経験からみると、市場経済と民主主義は同時に発展してきた。しかし、市場経済と民主主義の原理は必ずしも整合的ではない。市場メカニズムによる富の配分が、民主主義による意思決定が目指すものと一致するとは限らないからだ。市場メカニズムの活用と民主主義をどう組み合わせるか。そして、相互補完的な関係をどう構築するかという課題は常に存在する。

 最近、主要先進国で政治上のポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭しているのは、この組み合わせがうまく機能していないことの反映ではないか。市場経済の原理だけで富が配分されれば、国民の間で格差が大きく拡大するのは当然だろう。市場経済には、より完全な市場を求めてグローバル化する傾向もある。格差の拡大やグローバル化のきしみが、民主主義を通じてポピュリズムの台頭を生んだ可能性がある。

 1980年代以降、日本を含む多くの先進国は「福祉国家」から、より市場を重視する方向に制度改革を進めた。さらに、オイルショックを機に低下した経済成長力を市場重視による活力強化で再生しようとしてきた。

 一方、財政の介入なしには解決できない経済危機をいくつも経験した。日本のバブル経済崩壊後の不良債権処理、米国のリーマン・ショックへの対応、そして欧州のソブリン債務危機――。こうした市場の失敗に対する直接的な金融支援、破綻処理コストや間接的な不況対策など、問題解決のために国家財政を投入せざるをえなかった。

 しかし、それを誰が負担すべきか、世代間の負担割合など民主主義はなお結論を出せていない。つまり、国民全体としてみれば、負担の責任を放棄してベネフィット(利益)のみを享受し続けることになってしまった。現在の代議制民主主義は、経済の発展方向との間で時代遅れになりつつあるのかもしれない。

(大和総研顧問 岡野進)






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