郊外型家電量販店の“空回り” | ニコニコニュース – ニコニコニュース

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 昨年の暮れ、壊れかけのオーブントースターを買い替えたいと家族に言われて、家電量販店に行く機会があった。横浜の旧市街の住民としては、横浜駅のカメラ量販の巨艦店を、まずはのぞいてみることになるのだが、行ってみると相変わらずの繁盛ぶりで、販売員を捉まえるのも一苦労といった感じだった。

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 ただ、よく見ると、ここ数年の間に売場のにぎわいはだいぶ変わっていて、混雑しているのは調理家電や生活家電の売場だった。少し前まで混んでいたPC、スマートフォン、TV売場は結構空いている。家電の売れ筋は変わったなと思いながら、郊外型大型店はどうなっているか興味が湧いて、普段はあまり行かない郊外店にも足を運んでみることにした。

 そこで見た店内の風景は、郊外型家電量販店の苦境を改めて感じさせるものだった。

●昔のディスカウントストアを彷彿させる

 訪れたのは、横浜市内のJRの駅から数キロ離れた、片側2車線の幹線道路沿いにある家電量販大手の郊外店。斜面を削って作られているため、よく見掛けるピロティタイプ(1階が柱だけの駐車場で、2階以上に店舗があるという郊外の家電量販店によくあるタイプ)ではなく、1階前面駐車場と3階以上に駐車場がある売場面積6000平方メートル以上の店だ。

 店舗の1F入り口付近が、結構な台数を展示した軽自動車売場(立ち止まる人はほとんどいない)。そこを通り過ぎて、壁伝いに奥に進むと化粧品、ドラッグ売場、生活雑貨類が広がっており、さらに進むと食品、菓子、飲料、酒売場が続く。1階売場の4分の1は非家電コーナーといった構成だ。

 3階駐車場からの動線で、2階売場に入ると、入り口付近は書籍売場が結構な広さを占めている。その他のスペースは、よくある家電売場が展開してはいるが、全体として店舗のスペースのかなりの部分が非家電売場になっている。

 ただ、非家電売場の品ぞろえは平板な感じで、悪く言えば昔のディスカウントストアといったイメージ。店の壁面に「ポイントで○○を買おう」と大書されているのを見ると、家電で貯めたポイントを、店内で使わせる狙いのようだが、個人的には購買意欲がそそられず、中途半端な売場に違和感が残っただけだった。郊外の店舗では、今や家電だけでは、この大きなスペースを埋められなくなったんだな、というのが素直な感想だ。

●旧来型ビジネスモデルの限界

 かつて、秋葉原や大阪日本橋の電気街から始まった家電量販店業界は、2000年代以降、郊外大型店を全国展開するヤマダ電機が国内を席巻し、圧倒的な最大手としての地位を確立した。

 都市部においてはヨドバシカメラ、ビックカメラといった駅前巨艦店タイプのカメラ系量販店も存在感は大きいが、全国的にみればヤマダ電機、ケーズデンキといった、郊外に大きな店を出す企業が、コジマなどの中小型店チェーンを駆逐していくというのが業界の構図だった。こうした成功体験から郊外の家電量販店は競合店より大きな店を後出しして、マーケットを奪うというのが、この業界の定石となっていた。

 ただ、うつろいやすい流通業界のこと、こうした手法は今や過去のものとなりつつある。その背景は、消費喚起につながるような新製品が乏しくなっていることが主原因ではあるが、家電量販店のかつてのビジネスモデルが陳腐化したという点も見逃せない。少しご説明したい。

 家電製品は高度成長期の「三種の神器」(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)に始まって、「新三種の神器」(カラーテレビ、クーラー、車のいわゆる3C)を経て、2000年代の「デジタル三種の神器」(デジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビ)、そしてPC、携帯、スマホ、タブレットと大衆需要につながる新製品が常に出現してきた。

 当初、メーカー主導の流通体系である系列電器店(例えば、ナショナルショップ)が主要チャネルであったが、家電量販店が台頭するようになるとその主導権を握るようになり、家電メーカーも量販店を主要チャネルとして遇することになっていく。

 特に1970年代以降にモータリゼーションの追い風で台頭した、コジマなどの郊外型家電量販店チェーンを舞台に、家電メーカー同士の新製品のシェア競争を優先するようになった。結果、成長力ある郊外大型店チェーンが新製品を安く優先的に仕入れられる状況が作り出され、既存の中小型店チェーンは価格競争に敗れて淘汰されていった。

 こうした経緯の中で、現在生き残っている家電量販店チェーン大手の基本的な競争戦略は単純だった。メーカーが売り込みたいその時々の新製品をとにかく地域で一番売れば元が取れるというビジネスモデルであったため、売れることを前提に新製品を徹底的に薄利多売する。それが実現すると新製品ではもうからなくても、その他の定番商品も他社より有利な条件で仕入れることができる。

 新製品の低価格に誘引され、店舗の集客力が高まり、またポイント等の囲い込みもあり、定番商品や関連機器、備品等はそこまで廉売しなくても売れていく。新製品ジャンルが拡大している時代は、こうしたビジネスモデルは極めて有効だったため、現在の上位企業は、ほぼこうした手法の成功者で占められることとなった。

 こうした戦略は公表資料からもうかがい知ることが可能だ。下の表は、商品別の販売額、仕入額を有価証券報告書で開示しているケーズホールディングスの2007年2月期のデータである。これを見ると、この時点で、どういった商品をまき餌にして、どういった商品でもうけていたかが大体分かる。PC、携帯、テレビを極端に薄利多売し、エアコン、関連機器、小型家電、その他の商品でもうけていたことが明確に示されている(エアコンの利が高いのは季節商品なので駆け込みで買うこと、および設置工事日程との関係上、価格比較考量が十分にできない、と見られる)。

 しかし、こうした手法は新製品ジャンルが生まれ、新たな需要が生まれている環境でなければ成り立ちづらい。メーカーが熾烈なシェア競争を行う新需要がなければ、メーカーは利益確保を優先して価格競争に協力しないからだ。新ジャンルの大衆需需要型商品が出ない状況となった今、こうしたやり方が成立しないのは必然とも言える(現在、どうなっているかはご紹介しないが、ご興味あれば有価証券報告書をひも解いていただきたい)。

●ポイントシステムのてこ入れを

 一時期、世界を席巻した日本の家電メーカーの技術革新が生み出した、さまざまな革新的新製品の追い風にうまく乗って成長を続けてきた家電量販店であるが、そのビジネスモデルは変わっていかざるを得ないだろう。仮に消費を喚起するような新製品が再び登場したとしても、これまでのやり方はもう使えない。時代が変わり、家電メーカーの国籍も多様化し、これまでのように、メーカーが国内シェア競争にしのぎを削るといった環境は、今後、想定できないからだ。

 ご存じのように、家電販売チャネルのECシフトも着実に進行しており、今後、リアル店舗チェーンが新商品を低価格で提供することをまき餌にして、収益商材を買ってもらう、というモデル自体成立しない。こうなると店舗当たりの売り上げが下がってくるため、人口集積度が低い郊外店舗から徐々に淘汰が進んでいくことになる。時代は変わったのだ。

 ただ今後、郊外店の淘汰が進んでいくといっても、当面、急激に家電マーケットが縮小するという見通しはないし、その存在意義も相応に維持されるだろう。EC、ネットショッピングへのシフトは続くことは間違いないが、皆が販売員の説明と設置等を不要とすることはないだろう。家電に関する情報格差は拡大しており、誰もがECで商品の選択や設置をスムーズに行えるわけではないからだ。一定の需要は残るため、地域上位店を一定量確保すれば十分存続は可能だと思う。ただ、生き残りのための戦略が、冒頭に紹介した店舗のような中途半端な非家電売場の併設というのは、どうにも。

 そもそもの話をすれば、購買頻度が異なる家電製品と、食品や消耗品雑貨は、店舗内でのシナジーがあまりないことは、過去のさまざまな企業の取り組みで実証済みである。ざっくり言ってしまえば、家電量販店と食品スーパー、ドラッグストアが一緒に出店している共同店舗があるとしよう。食品スーパーやドラッグストアのように平日にでも日々の必需品補充のため立ち寄る店と、かたや、家族皆で話し合って買うかどうかを決めるため休日に訪れる家電量販とでは、店に行くタイミング、客層が違う。こうしたタイプの違う店の共同出店は、実際これまであまり良い結果を生んでいない。それだけ相性の良くない商品を、門外漢の家電量販が見よう見まねで提供したとしても、顧客にアピールすることは難しいだろう。

 こうしたことを考えていると、いっそのこと、地域の食品スーパーやドラッグストアにポイントシステムごと提供して、家電大手のポイントを地域の連携店舗で、等価で使用できるように開放してしまえばいいと思う。購買頻度が異なるため共同出店にはシナジーがないとしても、ポイント利用の自由度は、時空を超えて顧客に利便性が提供できる。直接的な囲い込み効果は薄れるが、ポイントの利用価値は明らかに向上する(同じものを同等の価格で買うのなら、ポイントの使い勝手がいい方を選ぶ、という考え方)。

 さらに言えば、ポイント制度というものは、顧客囲い込みのための販促ツールではない。ポイントという情報料を顧客にお支払いして、顧客購買履歴というビッグデータを収集し、マーケティングに反映させることが、本来の目的のはずなのだ。

 家電量販店の場合、ポイントには歴史的に値引きといった意味合いが大きく、本来のポイントとは性格が異なる面があるのも事実だ(これをある意味、明確に改善提示しているのが、ケーズデンキの現金値引きと解釈している)。ただ、これからは他業態と連携して顧客データを共有し、ビッグデータ分析、マーケティング提案の軸となることを目指してはいかがだろう。

 これまで、家電量販をはじめ、小売業はまき餌となる商材で価格訴求し、店に来てもらって、収益商材を買ってもらっていたということを前段で申し上げた。そうした集客商材が失われつつある今、ポイントを広く開放することによって利便性を高めることを撒き餌とする手もあるのではないか。家電製品の性格上、商品での差別化が難しいからこそ、付帯サービスで差別化することは重要だ。

 これまで家電量販店の購買履歴データは利用頻度の低さから、単独のデータとしてはマーケティング分析には難があったはずだ。これが頻度の高いデータとつなげられれば、ビッグデータとしての価値は飛躍的に向上するはずだ。

 ポイントはグループ内消費してもらうことで、収益に寄与していたはずだ、というご意見はあるだろう。値引きしただけだと減益効果しかないが、値引き分をポイントにして商品を買ってもらえば、商品の粗利益分は取り返せるからだ。ただ、ポイントに関しても、損して、得とる方向へ向かうべきだと思うのである。新たなまき餌だと考えれば、検討の余地があるはずだ。

(中井彰人)




2000年代以降に急増した郊外型の家電量販店



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