サイボウズ式:大きな夢じゃなくていい、スケールしなくていい。会社員は小さくてもいいから「やりたいこと」を実験していこう – ハフィントンポスト

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サイボウズ式


株式会社スマイルズの「業務外業務」というサービスを使って、同社の代表取締役社長・遠山正道さんに着回し服をコーディネートしてもらったサイボウズ代表取締役社長・青野慶久。

後編では、「業務外業務」開始の理由を皮切りに、老後の生きがいや複業の必要性など、人生100年時代の働き方についての対談をお届けします。

「100人の集団脱サラのススメ」や「100年残る企業になりたいとかよくわからない」など、会社のあり方について自由に思考するふたりならではの言葉がたくさん出てきました。


「業務外業務」というサービスを始めた理由

青野:遠山さんは、どうして「業務外業務」を始めようと思ったんですか?

いろんな人が「本来の業務とはまったく関係ない分野で複業する」って、ものすごくおもしろい取り組みですよね。

遠山:人間の平均寿命はどんどん延びて、今や「人生100年時代」と言われています。

たとえば私は今55歳なので、病床の時期がラスト5年くらいにあったとしても、あと40年は生きなきゃいけないんですよ。

青野:そう聞くと、かなり長いですよね。

遠山:でしょう? 生きていくためには、家賃も食費も稼がなければいけないし、生きがいも自分で見出していかなければいけない。

それを一社で賄(まかな)うのはもう現実的じゃないですし、「じゃあ業務外の時間で、自分の生きがいや働き方を試す場を作ろう」と思ったのがきっかけです。

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遠山 正道(とおやま・まさみち)さん。株式会社スマイルズ 代表取締役社長。食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」を展開。また、株式会社スマイルズがアーティストとして「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」や「瀬戸内国際芸術祭2016」に作品を出品する取組みも行っている。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

青野:ひとつの企業で限定された仕事にしか就かないことは、もうリスクとなる時代ですもんね。

企業に依存しない生き方を考えるきっかけを提供するのは、素晴らしいことだと思います。

遠山:私も「ファッションコーディネート」だけでなく、「乾杯の挨拶」や「茶話会」といったいくつかの「業務外業務」をやっているんですが、純粋に楽しいんですよね。

こういう取り組みが少しでも増えてくれたら、という思いはあります。

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青野:少子高齢化で人手不足が進むと、ひとりが二役、三役しないと回らなくなってくるんですよね。

たとえば、田舎の家で照明器具が故障したとき、電気屋さんを呼ぶのは大変ですけど、近所に住んでいる手先が器用なおじさんなら呼べて、その人が直してくれる。

こうやって、プロとまではいかなくとも得意な分野を複数持って、ひとりがひとつの役割に納まったり、ひとつの会社に留まったりしない時代がくるんでしょうね。

遠山:そうですね。会社や家族といったひとつのコミュニティにとらわれない複業という考え方は「労働力の減少」という切実な社会問題の対策にもなるし、結果的に人生を豊かにするための手段になってくるのだと思います。

青野:今日、コーディネートしていただいたことも、まさにそのひとつですよね。遠山社長からしたら趣味の延長線上にあるような仕事が、私からすると人生が変わるような出来事になっているかもしれない。

こうやって自分が「心から好きだ」と思えることに取り組んだ結果、他者に良い影響を与えていくことが、プラスの連鎖を生むといいですよね。

「楽しいと思える仕事を」サラリーマンの生き方改革

遠山:サラリーマンが会社でやりたいことをやるのは、これまで御法度だったというか、許される空気がなかったと思うんです。だけど、サラリーマンには会社を辞めても続く人生があるんですよね。

そう考えると、ただ定年まで貯金するんじゃなくて、「魚をさばけるように土日練習してみようかな」とか「そしたらお店を始めてもいいな」とか、もうちょっと自由な発想が出てきてもいいと思うんです。

青野:週末だけお店を開けて、お酒を飲みながら料理を出して好きな人たちが集まるとか、とても楽しそうですよね。

遠山:いいですよね。だから「働き方改革」って、労働時間を規制することではなくて、よりよく働ける手段や考え方、可能性を提示することなんじゃないかと思っています。

青野:会社の中にいる時間だけでなく、人生単位で「働くこと」について考える。それこそ本当の働き方改革なんですね。

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青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。2011年からは、事業のクラウド化を推進。厚生労働省「働き方の未来 2035」懇談会メンバーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)。

遠山:企業にいると、新規事業には「スケールしていきそうなビジネスか?」という視点を求められることが多いですけど、あれももう、縛られ過ぎていると感じます。

青野:MBA(経営学修士)的な考えにとらわれていますよね。スケールすることが前提のビジネスが多いですが、個人でやるぶんには、楽しめるサイズ感があればそれでいいのに。

遠山:「スケールしなきゃ」っていうのは、悪魔の言葉なんですよね。スケールしたらつまらなくなる業態って、いくらでもあります。

スマイルズだったら、「森岡書店」という本屋もそのうちのひとつで、銀座に5坪の敷地を借りて、そこで1冊の本だけ売っているんです。瀬戸内にある「檸檬ホテル(レモンホテル)」も同様で、一日一組限定のホテルにしていることに価値を置いています。

どちらもスケールしちゃったら本当につまらないでしょうね。

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遠山:そういう意味で、「業務外業務」の考え方は、サラリーマンにビジネス感覚を身につけてもらう側面と、「やりたかったこと」に挑戦する機会を提供する側面を持っていると思っています。

青野:自分の夢を叶える、ということですか?

遠山:「夢」っていうとちょっと大袈裟かもしれない。「企(くわだ)て」くらいかなと思っています。

「夢」っていうと立派じゃないとダメで、1個か2個くらいのイメージがありますけど、「企て」だったら、まず10個くらいやってみようかな、くらいの気軽さがあると思うんですよね。

青野:ああ、いいですね。「機会があったらやってみたいな」を、すべてやる。豊かな人生ですよね。

遠山:たとえば大手の広告代理店で役職に就いていた人が退職して、70歳から大工さんに弟子入りする。

金髪の20歳くらいの兄ちゃんに「おっさん、おっさん」と言われながら10年くらい働くと、家具とかだったらそこそこ作れるようになると思うんですよね。

青野:それでもまだ80歳ですもんね。

遠山:そうです。そこから大工の手仕事と代理店時代のクリエイティビティとネットワークを活かして、自分だけの家具作りをやる。100歳までの20年、自分が本当に作りたいものを作れる。いい人生ですよね。

青野:最後の20年が一番楽しそうですね。

遠山:100年って、それだけのラウンド数が用意されているんですよ。

でも、いきなり大工やれ! って言われても、怖いですよね。そういうものを、「業務外業務」で少しずつ試してみればいいと思っています。

青野:やってみて「違う」と思ったら、違う企てをすればいいだけですもんね。

「100人の集団脱サラ」ができたら、面白いんじゃないか

青野:一方で、まだ多くの会社が複業を禁止しています。

その理由のひとつに「複業がうまくいきすぎると、退職してしまうかもしれない」という声がありますが、スマイルズさんは、そういった心配はされていないんですか?

遠山:できれば、その事業を応援するかたちで、一緒にやりたいと思っています。

青野:「社内での事業にする」でもなく、「独立」でもなく、「一緒にやる」という選択肢があるんですね。

遠山:今、スマイルズの中に子会社がいくつもあるんですけど、いずれも配当や利益は本当に微々たるものです。

でも、たとえばそれが20個、30個集まったら、ひとつの村みたくなる。きっとその村にはユニークな人やコトが集まっているから、お金だけではないとても素敵な価値が詰まっているんですよ。

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青野:「村」って発想はいいですね。いろんな人がいて、いろんな面白いことをやっている。楽しそうだから入村したいです(笑)。

遠山:スマイルズを三菱商事から独立させたときに、サラリーマンっていいビジネスモデルだなと気付かされたんです。初月から何のノウハウも利益もないのに給料が振り込まれるって、すごいことだなあと。

青野:「サラリーマン」という仕組みは本当に画期的ですよね。

遠山:普通、ビジネスをするには銀行からお金を借りて、お店を作るために5000万円とか借金して、上手くいけば利益、ダメだと赤字、みたいなもんじゃないですか。安定して給与がもらえるって、すごいですよね。

青野:だから、世の中のサラリーマン化が進むんでしょうね。労働人口が減っていてもまだサラリーマンは増えているんですよ。

個人的には、日本全体がサラリーマン化しちゃうと、それによって働くモチベーションを失ったり、ひとりひとりのビジネス感覚も失っちゃったりするのかもと思っています。

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遠山:いつまでもサラリーマンでいられればいいですけどね。

青野:この時代ですから、そういうわけにもいかなくなりますからね。40歳、50歳で退職を迫られたとき、初めて慌てる人もいるでしょうね。

遠山:だから社外に出たような気持ちで、「業務外業務」で自分の無力さを知るのも、いいかもしれませんね。

青野:そうそう。「1万円もらうのって、こんなに大変なんだ!」って気付けるだけで大きな進歩ですよね。

遠山:それで、ある会社の講演会に行ったときに提案した案があるんです。「100人の集団脱サラ」って言うんですけど。

青野:集団脱サラ!?

遠山:会社が脱サラ希望者を募って、2年間くらい、本当に脱サラさせちゃうんです。以下のような7か条を作って、あとは個々人に任せる。いろいろ刺激的なことが起きると思うんですよね。

  • 内容不問、社会か会社か自分の為に。
  • 公約あり、落選なし。
  • 掛け金、給与、要交渉。
  • 言い訳無用、全ては自分に帰ってくる。
  • 2年後人生再プレゼン。
  • 大きくなって帰ってこいよ。
  • その他、細かい定めなし。

青野:面白いですね。いい刺激を生みそうです。

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遠山:「給料が振り込まれないって、こういうことか!」ってリアルな体験ができるし、食っていくために、今のスキルでできることを必死に考えると思うんです。

青野:本人たちからしたら、無人島でサバイバルするようなものなんでしょうね。

遠山:きっと脱サラした社員は、その経験を踏まえて、改めて「やっぱりサラリーマンのままがいい」とか「複業から」とか「独立できるかも」とかに気付くから、こんなにいいことはないって思うんですよね。いろんなアイデアが出てきそうですし。

青野:見ている方も刺激を受けそうですし、そこで脱サラして成功したら、ビジネスノウハウを持って戻ってくるかもしれない。

遠山:脱サラでビジネスの大変さを知って、本業に活かす。あるいは新しい事業がそこで生まれるかもしれない。いつか複業に消極的な会社が、やってみてほしいです(笑)。

「100年残る企業になりたい」とか、よくわからない

遠山:離職の話に近いですけど、「100年残る企業になりたい」って目標を掲げる企業、たまにあるじゃないですか。

青野:ありますね、あります。

遠山:あれ、私はちょっとよく分からなくて。

青野:めちゃくちゃ共感します(笑)。

遠山:よかったです(笑)。

結果的に残れたら素晴らしいと思いますけど、たとえば役者がずっと舞台に立っていたいと思っても、観るお客さんがいないと商売にならないですからね。

青野:価値を提供し続けられたら自ずと10年、100年続くかもしれないですけど、飽きられる可能性はあるし、自分が飽きたら、辞めてもいいですしね。

遠山:そうそう。辞めてもいい。だから複業してみた結果、より良い自分の居心地が見つかったなら、退職してもそれはそれでいいのだと思います。

青野:会社としては囲い込みたくなりますけど、「辞めてもいい」という選択肢を用意できることが大事なんでしょうね。

遠山:でも、「辞め方は注意しろよ」って言いたいです。

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青野:辞め方ですか。

遠山:変な感じで辞めちゃうと、戻りづらいじゃないですか。

人間だから、辞めるときに何かしらあるかもしれないけれど、「お世話になったし、またやろうね」ってお互いに言える関係性を作っておくことは大事なのかな、と。

青野:簡単に独立するって言っても、大変ですもんねえ。戻れる場所があるなら、それほど心強いことはないですよね、きっと。

遠山:別に戻ってくる前提がなくても、つながりを残しておくことが大事なんです。

個々人のつながりで生まれる仕事は想像よりも多いですからね。

青野:人生を通してやりたいことを企てて、「業務外業務」で働き方、生き方の小さな実験をして、「村」のようにつながりを作っていく。サラリーマンにおける理想の働き方改革ですね、本当に。

執筆・カツセマサヒコ/撮影・橋本直己/企画編集・明石悠佳






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